戦争に抗議する グローバル市民社会の未来(10月10日付)
ガザでは子どもや女性、報道関係者や医療関係者など多くの犠牲者が出ており、すでに死者は6万7千人を超えているとされ、負傷者はその数倍に及ぶ。また、イスラエルが国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)などの人道支援団体を追い出したことにより、ガザでは飢餓が広がり、そのために失われた命や健康も推測するしかない。異常な事態である。ヨルダン川西岸地区のパレスチナ人たちに対する抑圧も甚だしい。
国連総会は9月12日、イスラエルとパレスチナの「二国家解決」の実現を目指す決議を142カ国の賛成多数で採択した。反対したのはイスラエル、米国など10カ国にとどまる。また、国連安全保障理事会は18日、パレスチナ自治区ガザにおける無条件かつ恒久的な即時停戦を求める決議案を採決した。理事国15カ国のうち14カ国が賛成したが、米国の拒否権行使で否決された。
人道に著しく背くガザやパレスチナ住民の状況に対して世界の世論は厳しく対峙し、多くの国々でイスラエルのジェノサイドや暴力的支配に対する抗議の声があり、大規模なデモが行われている。ガザに支援物資を届けることを目的に、スウェーデンの活動家グレタ・トゥンベリ氏や南アフリカの人種差別克服のリーダー、ネルソン・マンデラ元大統領の孫のマンドラ・マンデラ氏ら約500人が参加して、海路ガザへ向かったグローバル・スムード船団(GSF)は、10月にイスラエルに拿捕されたが、全世界から注目を集めた。
大国が戦争当事者となったり、大国が後ろ盾となって戦争を仕掛けたりして、国家間の外交や国際機関が戦争を止めることができない中で、このような平和を望む世界世論の高まりはグローバルな社会の動向にとって大きな意義をもつものである。合わせてカトリック教会をはじめとして世界の宗教者も、戦闘停止や人道的危機を終わらせるべく声を上げている。
ところが、日本のマスメディアは平和を求めるこうした世界の世論の動向を報道することが少ない。これはジェノサイドとよばれるような著しい暴力や人道危機に対する認識の浅さが反映しているように思えてならない。これはまた、世界の政治やグローバル社会の新しいあり方への関心の薄さとも関わりがあるだろう。
大国の政府に追随する社会動向に距離をとり、それに抵抗するようなグローバル市民社会の動きにもっと関心を寄せる必要がある。平和を志向するグローバル社会の未来に向けた世論の醸成と、それに寄与する報道を期待したい。





