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第22回「涙骨賞」を募集
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「共生」の理想は? ネットで高じる排外主義(11月12日付)

2025年11月14日 13時00分

「人間の安全保障」という言葉を、つい最近までよく耳にした。「国の安全保障」に対し、人の生存と生活の安全を保障する。その理念の普及を日本が積極的に進めたという。1999年、国連大学の講演で故小渕恵三首相は「人間の安全保障を確保するため(略)人間が個人として尊重され、個人の可能性が発揮でき、社会の構成員として責任を果たしうる社会の構築が必要」と語った。個々の人権は普遍的だ。国や民族、宗教などの壁を越えて守り抜く、つまり共生社会の実現を訴えていた。

小渕氏はその前年にも、国際会議で「人間の生存、生活、尊厳を脅かすあらゆる種類の脅威を包括的に捉え、これらに対する取り組みを強化する」考え方が「人間の安全保障」と述べ、アジア初のノーベル経済学賞を受賞した著名なインドの経済学者、アマルティア・セン氏が著書『人間の安全保障』で、この発言を引いている。

2003年、国連難民高等弁務官を務めた故緒方貞子氏の国際協力機構(JICA)理事長への就任も追い風に12年、国連で「人間安全保障決議」が採択された。3年後の15年には、重なる部分の多いSDGs(持続可能な開発目標)が採択されている。

日本の理念なきODA(政府開発援助)という批判をかわすなどの狙いもあったようだが、グローバル化で南北の格差が広がり、日本の国際貢献が問われる中、発言の内容は時宜を得たものだった。

それに比して昨今の政治が語る言葉の軽薄さはどうしたことか。夏の参院選以降、外国人を標的にして監視の強化を求める言説が目立つ。中でも参政党の「日本人ファースト」は、米国トランプ政権の排外主義と相似形だ。高市早苗首相が自民党総裁選で、奈良公園の鹿が外国人に蹴り上げられている、と根拠を示さず演説したことが一部で批判されたが、高市氏は難民受け入れなどにも消極的だった故安倍晋三首相の後継者を任じ、今後、外国人規制の強化が予想される。

欧米で激しさを増す排外主義もそうだが、外国人排斥の潮流はインターネットによる側面が大きい。SNSなどは社会に募る不満や将来不安のはけ口を外国人に向け、否定的な感情を浴びせ続ける。そうした言説は同調者を囲い込みやすく、不寛容な時代の空気を醸成していく。

日本は極端な難民規制が象徴するが、閉鎖的であり、排外主義が一段と高じ分断が深まりかねない。だからこそ、世は相互依存で成り立っているという道理が重要だ。広く啓発したいものである。

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