宗教界の社会貢献 認知度改善の必要(11月19日付)
宗教は長い歴史の中で、人々の心の拠り所となってきたが、近年は社会的な存在意義が問われている。庭野平和財団が6月に第4回「宗教団体の社会貢献活動に関する調査」を実施した。回答した1184人の7割が、宗教団体の活動について「知らない、分からない」と答えたという。宗教者にとって、いや社会全体にとっても極めて深刻な警鐘といえよう。
この調査は2008年12月の新しい公益法人認定法の施行を機に始まった。宗教法人がその枠組みに含まれなかったことから、宗教団体の社会貢献や公共性について注目されるようになったためという。調査は08年以降、12年、16年にも実施している。
11年の東日本大震災では、宗教者の活動が報道されて耳目を集めた。犠牲者の供養やがれきの撤去、物資の提供、炊き出し、傾聴など、その姿が報道され、社会の記憶に刻まれた。16年の調査では宗教者・宗教団体の社会貢献を「知っている」が、08年の34・8%から42・5%へと上昇したのも、こうした背景があったからだろう。しかし、今回の調査結果は、そうした関心が既に薄れてしまっていることを如実に示している。「知っている」と答えた割合が29・6%にまで落ち「分からない」「知らない」は70・5%にまで達した。
さらに問題なのは、大規模災害時に「宗教施設が避難場所となっていた」ことを知っていたかどうかを問う設問では29・7%(12年)から18・2%(25年)まで激減したことだ。同様に「葬儀や慰霊を行っていた」は26・9%から10・6%、「被災者の心のケアに当たっていた」は12・4%から4・5%となり、災害時における宗教者の活動の認知度は、他の項目も軒並み減少している。
一方で、宗教界は近年、各自治体と連携し、災害時に宗教施設を指定避難所などに活用する動きが広がり、4月には東京都宗教連盟が東京都と防災に関する包括協定を結んだ。稲場圭信・大阪大教授の調査によると、協定により災害時には約4500の宗教施設が利用できると推測している。災害時の支援をはじめとした宗教界の取り組みは確実に社会を支える力となっている。
宗教界には陰徳といった言葉があるように、自らの行いをことさら発信や宣伝しない風潮がある。だが、社会がその存在を認知していなければ、災害時の連携にも支障が生じる恐れがある。情報化社会にあって、宗教界はこうした活動をより積極的に発信していく必要があるだろう。




