僧侶によるネット相談室を立ち上げた 堀下剛司氏(55)

お坊さんが悩み相談に乗ってくれるインターネット相談室「hasunoha(ハスノハ)」を2012年に立ち上げた。回答者は全員僧侶で、恋愛や子育て、仕事、人間関係、心や体の悩みなど、どんな相談にも真摯に向き合い答えてくれる。急激に進化するネット社会でその需要と可能性は広がりを見せている。
河合清治
ハスノハを立ち上げようと思った理由は。
堀下 きっかけは2011年の東日本大震災でした。その頃、私はIT企業で働いていて、ちょうど「ヤフー」からソーシャルゲームの「グリー」に転職した頃でした。特にヤフーで働いていた時にはインターネットやSNSで、それまで不可能だと思われていたことや新しいことがどんどん実現されていくのを目の当たりにしました。
「この技術を使って困っている人を助け、役に立ちたい」と考えている中で起きた大震災でした。津波で多くの人が亡くなられ、住む家を失った人々が避難所で苦しい生活を強いられ、日本全体が悲しみに包まれました。
人々に寄り添い、元気を出してもらうためにはどうすればよいのかと考えた末、当時人気だった「ヤフー知恵袋」をヒントに、お坊さんに回答してもらえるQ&Aサイトを立ち上げようと思いました。
なぜお坊さんに回答を。
堀下 震災を報道した海外のメディアが、被災地で暴動や略奪が起きず、周囲の人々が分かち合い、助け合って生活していることをたたえていたのを覚えているでしょうか。
世界に誇れる日本人のこの価値観、精神性はどこから来ているのでしょう。それは日本人の体に宗教心がしっかりと備わり、染みついているからです。でも自分たちの体の中に備わっている宗教心を忘れてしまいがちで、悩み、苦しんでしまいます。本来持っている仏心に気付かせてくれるのに一番ふさわしいのはお坊さんだと考えました。
相談者の悩みに対して回答者は、仏教の教えを現代社会に対応した表現で分かりやすく答え、優しく癒やしてくれるだけでなく、時には喝を入れて叱咤激励してくれます。自分の心の中にある仏心に気づき、その精神性、価値観に誇りを持ってもらいたいというのが私の願いです。
協力してくれるお坊さんはいたのですか。
堀下 縁を結んでくれたのが、実は私の妻でした。中外日報さんは昔、インドや中国への仏跡巡拝などの旅行を企画されていたそうですね。結婚する前の話ですが、その時、提携していた旅行社で妻が働いてい…
つづきは2025年8月20日号をご覧ください