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中外日報社「宗教文化講座」

道義喪失の人類社会 問われる宗教の役割(1月1日付)

2026年1月5日 10時21分

平和で差別や排除がより少ない公正な人類社会へ前向きに進んでいくことで世界が合意し、日本もそれへの貢献を目指すように見えたのが第2次世界大戦の終了時だった。1945年には国連ができ、46年に日本国憲法が、48年には世界人権宣言が公布された。

ところが、その後すぐに朝鮮戦争が始まり、続いて東西冷戦の時代となる。核実験による威嚇と核実験の被害が人々を恐れさせ、世界的に平和への声が高まったが、軍拡競争は続いた。ところが80年代の末、ソ連が解体し、冷戦時代が終焉する。ベルリンの壁の崩壊により、新たに世界が平和と公正へと前進する時代が来るのではという希望が広がった。

だが、イスラーム勢力の台頭が恐れられ、「文明の衝突」が懸念される時代が来る。天安門事件と9・11米国同時テロ、ロシアの復興を経て、新たに大国の覇権主義が恐れられる時代になった。

ロシアのウクライナ侵攻と米国の支持を背景にしたイスラエルのガザ侵攻は、目指す大義を欠いた大国の力の行使を印象づける。その影響を受けてか、世界各地に「自国ファースト」を掲げる国が増え、日本でも尊大な自国称賛、国家エゴイズムを疑わせる言説や行動が目立つようになっている。

第2次世界大戦後の80年を以上のように振り返ると、人類社会の道義喪失が進んでいると感じる人が増えているのは自然なことなのだろう。自国の目先の利益ばかりが重視され、人類社会が共有するはずの平和と公正、それに基づく進歩の感覚が後退しているように感じられるのだ。

政治動向において道義の後退が顕著に見られることと、世界各地で宗教信仰を尊ぶ傾向が増大していることには関係があるだろう。イスラームの復興や米国での福音派の興隆は注目されてきたが、昨今は英国やフランスのような、従来、世俗化が進んでいると見なされた国々でも宗教回帰の傾向があるという報告がなされている。

ここで重要なのは、世界各地の宗教勢力が人類社会の道義の回復に寄与する方向をとるか、それに反する方向に向かうのか、という問いである。諸宗教が他の宗教勢力や思想勢力を敵対視するのではなく、多様性を認めて共に向かうべき方向性を指し示していけるかどうか。そこが重要である。

後者の方向性を示す宗教勢力が増大していけば、人類社会が道義を取り戻していくことにも貢献できるだろう。平和を目指す宗教協力はその一つだ。2026年において、そうした動向がさらに顕著になることを願いたい。

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