歴史・音楽で町活性化 開かれた寺 夫婦で志向
京都市伏見区 浄土宗常念寺

桂川右岸の京都市伏見区淀水垂町にある常念寺は、本多廣賢住職(73)と寺庭婦人の茂美氏(79)の「二人三脚」で歴史を通じた町おこしや、檀家以外にも開かれた寺づくりにパワフルに取り組んでいる。
桂川では近年の発掘調査で2300年前の石器や壺、当時の姿をとどめる江戸時代初期の川船などが出土し、淀は歴史ある町として再発見されている。
淀の町を盛り上げる活動の一環として同寺は昨年、淀殿の念持仏だったと伝わる秘仏・郡分十一面観音菩薩像を初公開した。これを機に常念寺を知った人もいたという。今年も特別公開を行い、大学教授や桂川遺跡の調査員による講演も催した。
本多住職は「淀の町は京都競馬場や河津桜のイメージが強いが、京都の中心地が発展する上で重要な場所だった。昔の人々が守ってきた観音様や淀の歴史を知っていただき、町を盛り上げたい」と語る。
他方、茂美氏は幼稚園教諭の経験を生かし、音楽を通じて開かれた寺づくりに取り組む。「お寺はかつて人が集まる場所だった。檀家さん以外の地元の方が立ち寄ってくれるような雰囲気にしたい」と、多くの人が親しんできた童謡を歌う「童謡くらぶ」を始めた。参加者からの浄財で電子ピアノやミュージックベルを購入し、備品などを整えた。
歌唱の基礎となる発声を教えてほしいとの要望を受け、メゾソプラノ歌手の田川理穂氏を講師に「お寺ボイトレ」も開くようになった。
また、地元の人にプロの生の音楽を届けたいとの思いから「ふれあいコンサートin常念寺」を年に1回催し、今年で25周年を迎える。戦後80年の節目の年でもあり、戦争の犠牲者を追悼するイベントの開催も検討中だ。
ただ寺でのイベントには課題もあるという。茂美氏は「子育てに励む親や子どもにも来てもらいたいが、コーラスが好きだったり、音楽に元から関心があったりする人が来る段階にとどまっている。本当に来てほしい人たちに思いが届かないのが悩みの種だ」と打ち明ける。
それでも淀を盛り上げたいという熱い思いは変わらない。本多住職は「命が続く限り寺庭婦人には音楽で、僕には僕のできることで地域に貢献したい。淀の歴史や地域に誇りを持ってもらえればうれしい」とほほ笑む。
(椎葉太貴)