PR
購読試読
中外日報社ロゴ 中外日報社ロゴ
宗教と文化の専門新聞 創刊1897年
2025宗教文化講座
PR
2025宗教文化講座 第22回「涙骨賞」を募集

ガザ無差別攻撃 武力信仰が支配する世界(7月2日付)

2025年7月4日 09時16分

「膨大な軍事力でガザを無差別攻撃するイスラエル軍と、素手でがれきをどかし犠牲者を助け出そうとするガザ市民。この不釣り合いと不条理に怒りと心の痛みが募り、その日が広島原爆忌であることに思いをはせた」――国際NGO「国境なき医師団」の現場活動責任者、萩原健氏(58)は、昨年夏のパレスチナ自治区ガザでの活動を記録した『ガザ、戦下の人道医療援助』にそう記す。女性も子どもも見境なく強力な兵器で集団殺りくする。広島、長崎の被爆に通じるその非道に誰もが言葉を失う。

ガザの惨劇を顧みておきたい。犠牲者は5万7千人に迫り、3人に1人以上は子どもだ。イスラエルは救援物資の搬入を妨害し、全住民200万人余を食料不安、47万人を深刻な飢餓状態に追い込んでいるという。イスラエルが外国人記者のガザ取材を認めず、外国報道機関が情報源にする地元のジャーナリストが200人近く殺害され、飢餓と虐殺の全容は把握しきれない。だが、海外の民間援助団体スタッフの「胸が張り裂けそうだ」と悲痛な声がネット上に流れており、ある程度想像はつく。

イスラエルのネタニヤフ首相はハマスの指導者と共に国際刑事裁判所(ICC)に逮捕状を出されている。ガザ住民の飢餓を戦争手段に用いるなどが戦争犯罪と人道に対する犯罪に問われた。しかし、そもそも執拗なイスラエルのガザ攻撃は深刻な汚職疑惑で訴追されているネタニヤフ氏が裁判を長引かせ、また極右政党を政権につなぎ留め首相の地位を守るため、などの認識が広がっている。

その点で6月のイランへの先制攻撃も真意は不透明だ。ただ、イランの核開発阻止を主張し、米国を参戦させる狙いは実現した。ネタニヤフ氏は「まず力だ。それから平和だ」と語ったそうだが、武力で相手をねじ伏せた先の平和はどんな形か。深い疑念が湧く。

民族の垣根を越え、人々の尊厳を守り抜く法秩序の確立が求められる。ICCのネタニヤフ氏らへの逮捕状発付もその理念に基づくが、米国・トランプ大統領は逆にICCの判事らに制裁を科した。多くの国が制裁批判の声明を出したが、日本は参加していない。ICCの赤根智子所長は著書『戦争犯罪と闘う』で「ICCは存続の危機にあり、法の支配が消え、力が支配する世界に逆戻りしかねない」と日本の理解を訴えている。

ネタニヤフ氏の最終目的がガザ住民排除にあることは公然の秘密のようである。停戦してもそれは変わるまい。だが、今の世にそんな非情が許されるものだろうか。

無言の“被爆伝承者” 惨禍物語る宗教施設遺構(8月6日付)8月8日

広島・長崎への原爆投下から80年を経て惨禍を実際に知る被爆者が減り、初めて10万人(被爆者健康手帳所持者数)を下回った。語り部活動は、2024年度で1560回に計10万2…

英仏の安楽死法案 人間の尊厳と宗教者の役割(8月1日付)8月6日

先般、フランス、イギリスの下院で相次いで安楽死法案が可決された。ここでいう安楽死は、医師が患者に致死薬を直接処方する積極的安楽死ではなく、患者が処方された致死薬を自ら摂取…

歴史が逆流していないか 憂い深まる戦後80年の夏(7月30日付)8月1日

10年前の「戦後70年」に論壇の一部で「戦後80年はあるのか」と問う言論活動があった。終戦までの軍国主義と、平和と民主主義を基軸とする「戦後」社会を隔てる断層が消えていく…

都内を巡礼する宗教者と市民

【戦後80年】「不戦の誓い」次代へ 全国3都市で平和の巡礼 東京 文化・人種超え祈り

ニュース8月18日
原爆投下時刻に黙祷を捧げる僧俗

【戦後80年】原爆投下時刻に黙祷 戦争犠牲者を追悼 三井寺

ニュース8月18日
奈良市の三条通りを歩く宗教者ら

【戦後80年】全国3都市で平和の巡礼 奈良 道中、一般からの参加も

ニュース8月18日
このエントリーをはてなブックマークに追加