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国家関係と学術交流 次世代に希望託す日韓フォーラム

東京科学大教授 弓山達也氏

時事評論2025年7月30日 09時26分

6月28、29日に韓国・釜山の釜慶大学で日韓次世代学術フォーラムが開催され、筆者は15年ぶりに引率教員として参加した。日韓それぞれ10~20の大学から約50人の発表者が選抜され、1日目は学術発表が、2日目は調査旅行が行われた。

発表は人文社会8分野にまたがるが、フォーラム設立に大きな役割を果たした李元範東西大学教授が日本で宗教学を学んだこともあって、2004年の設立以来、多くの宗教研究者が参加してきた。筆者も院生指導をするようになって10人近くの院生をフォーラムに送ってきた。

加えてフォーラムには宗教研究としての前史と関連する学術交流がある。前史は日韓の宗教研究者の有志の間で1993年から98年まで毎年開催された日韓宗教研究者交流シンポジウムで、これは2001年から07年まで隔年開催の日韓宗教研究フォーラムに引き継がれた。その後、08年に中国が加わって東アジア宗教文化学会が設立されたが、2回の大会を開いて休止となった(15年から東アジア宗教研究フォーラムとして再編成されたが、これも2回で休止)。

筆者は1994年から、これらに関わり、東アジア宗教文化学会では事務局を担当した。日本語が堪能な韓国人研究者に助けられながらの国際交流で、学術的議論とともに、隣国の研究者との寝食をともにする数日間は得がたい体験だった。

一連の学術活動に参加した日本人研究者が、この貴重な機会を学生にも体験させたいとなるのは当然のことだった。2004年に愛知学院、慶應、そして筆者の前任校の大正の3大学で東西大学を訪問し、研究発表と1泊ホームステイを中心とした日韓学生共同セミナーを12年まで毎年開催した。教員の期待通り、学生の車座になっての話し合いは、さらにホームステイ先でご家族も加わり、展開されることもあった。

しかし学術交流も学生交流も2010年代に入り雲行きが怪しくなった。国際学会は日中韓で学会運営の違いをきっかけに溝が埋めがたくなり、学生交流も徐々に熱気がなくなっていった。背景には領土問題や歴史認識のずれなど「日韓冬の時代」があった。その時は、それまで培ってきた関係性で乗り越えられると思ったが、そう簡単でもなかった。

冒頭のフォーラムでは上述の1993年からの宗教研究者の集いを振り返る発表が朴炳道慶尚国立大学准教授からあった。彼と話しつつ、当時のシンポジウムの事務局が金光教教学研究所にあり、研究所紀要には教団の戦争協力も含むアジア進出の歴史に向き合う論文が教団研究者によって執筆・掲載されていたことを思い出した。学術交流の開始当時の雰囲気の一端を伝えるもので、過去の反省に基づき、一歩ずつ前進しようとする情熱が学術交流の背後にはあった。

かかる情熱が現在の自分にあるかは心許ない。しかし不安・不満のはけ口を他者に求める風潮が蔓延するなか、歴史と向き合い、ともに課題解決を目指す姿勢が今こそ必要であろう。文字通り次世代に希望を託すフォーラムの重要性を改めて痛感した次第である。

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