心肺蘇生の成功率を高めるために(1/2ページ)
浄土宗正明寺住職・L.S.F.A.インストラクター 森俊英氏
近年、大学の新入生全員への心肺蘇生講習や、保育者および小・中・高校の教職者への心肺蘇生講習が盛んに実施されるようになりました。さらには、死戦期呼吸に関する理解にも注力されつつあります。
こうした動きは社会全体にとって歓迎すべきことです。実際に、大学生が講習で身につけた知識とスキルで死戦期呼吸であることに気づいて心肺蘇生を開始し、傷病者を蘇生させた事例がテレビなどで大きく報道されました。
拙稿は「死戦期呼吸とは何か」を論点とします。心肺蘇生の全体の手順は、胸骨圧迫(胸を30回押さえる)と人工呼吸(口へ2回息を吹き込む)を繰り返し続けるのですが、それを開始するかどうかの判断は、傷病者の呼吸の有無によります。
胸と腹部を見て、上下の動きが無ければ心停止(心肺停止)と判断して、胸骨圧迫を開始します。呼吸が無ければ、なぜ心停止と判断するかの理由は後述しますが、その呼吸の有無を見るうえで、時に判断を迷わせることがあるのが、死戦期呼吸という状態です。
心停止(心肺停止)の直後にみられる死戦期呼吸とは「しゃくりあげるような呼吸が途切れ途切れにおこる」状態で正常な呼吸ではありません。顎が動いて見えても実際の呼吸ではありません。酸素が肺に取り込まれず、胸の動きはありません。ゆえに呼吸をしていない傷病者と同じと考え、胸骨圧迫から心肺蘇生を始めるべきなのです。
しかし、傷病者の顎が動いているのを見れば、「息をしている」と考えてしまい、救助者に判断への迷いが生じるかもしれません。
正常な呼吸でなければ、心停止(心肺停止)と判断をして、早く心肺蘇生を開始します。そして、実際に緊急を要する状況に接した際は、119番通報をして救急車要請をします。119番通報に関して、近年ではスマートフォンが社会全体に普及しました。もし、救助者が一人であっても携帯電話やスマートフォンから119番通報をして、スピーカー、ハンズフリー機能を使って、通信司令員に傷病者の状況を伝え、救急隊到着までに必要な応急手当やその方法を電話で口頭指導を受けながら、ただちに心肺蘇生を開始することができます。
こうしたことからも、心停止(心肺停止)という緊急時に居合わせた人が、119番通報とともに救急隊到着までの間に、救助者として心肺蘇生の開始を積極的に意識すべき大切さを窺い知ることができます。
総じて「判断に迷いが生じた」場合であっても、心肺蘇生を開始し、口頭指導を受けながら対応しつつ、救急車の到着までの時間が重要なのです。
ここからは体内のメカニズムを説明しながら、死戦期呼吸が起こる背景を述べておきます。そのことにより、心肺蘇生を開始するかどうかの判断にも役立てていただけることと思います。
以下、キーワードとして、「呼吸が止まれば心臓も止まる」・「心臓が止まれば呼吸も止まる」を示しながら述べてまいります。
〈呼吸停止 → 心臓停止〉
呼吸停止が原因で心臓も止まることを、呼吸原性の心肺停止と言います。心臓が拍動するのは、心臓のまわりの筋肉、心筋の伸縮によります。心筋が伸縮するには酸素が供給されなければなりません。ところが、窒息や溺水などの呼吸停止で、体内に酸素を含む空気が届かなくなると、やがて心臓は止まらざるを得ません。
〈心臓停止 → 呼吸停止〉
それとは逆に、心臓自身のトラブル、たとえば心臓発作や心筋梗塞などによって心臓がけいれんした場合、体内に血液を循環させるポンプ機能を果たせなくなります。
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