PR
購読試読
中外日報社ロゴ 中外日報社ロゴ
宗教と文化の専門新聞 創刊1897年
第22回「涙骨賞」を募集
PR
第22回「涙骨賞」を募集

心肺蘇生の成功率を高めるために(1/2ページ)

浄土宗正明寺住職・L.S.F.A.インストラクター 森俊英氏

2025年8月7日 09時22分
もり・しゅんえい氏=1962年生まれ。浄土宗正明寺(堺市堺区)住職。L.S.F.A.インストラクター/大阪刑務所篤志面接委員(心肺蘇生とAED講習担当)。保育園における乳幼児突然死予防および心肺蘇生講師。
死戦期呼吸とは

近年、大学の新入生全員への心肺蘇生講習や、保育者および小・中・高校の教職者への心肺蘇生講習が盛んに実施されるようになりました。さらには、死戦期呼吸に関する理解にも注力されつつあります。

こうした動きは社会全体にとって歓迎すべきことです。実際に、大学生が講習で身につけた知識とスキルで死戦期呼吸であることに気づいて心肺蘇生を開始し、傷病者を蘇生させた事例がテレビなどで大きく報道されました。

拙稿は「死戦期呼吸とは何か」を論点とします。心肺蘇生の全体の手順は、胸骨圧迫(胸を30回押さえる)と人工呼吸(口へ2回息を吹き込む)を繰り返し続けるのですが、それを開始するかどうかの判断は、傷病者の呼吸の有無によります。

胸と腹部を見て、上下の動きが無ければ心停止(心肺停止)と判断して、胸骨圧迫を開始します。呼吸が無ければ、なぜ心停止と判断するかの理由は後述しますが、その呼吸の有無を見るうえで、時に判断を迷わせることがあるのが、死戦期呼吸という状態です。

心停止(心肺停止)の直後にみられる死戦期呼吸とは「しゃくりあげるような呼吸が途切れ途切れにおこる」状態で正常な呼吸ではありません。顎が動いて見えても実際の呼吸ではありません。酸素が肺に取り込まれず、胸の動きはありません。ゆえに呼吸をしていない傷病者と同じと考え、胸骨圧迫から心肺蘇生を始めるべきなのです。

しかし、傷病者の顎が動いているのを見れば、「息をしている」と考えてしまい、救助者に判断への迷いが生じるかもしれません。

正常な呼吸でなければ、心停止(心肺停止)と判断をして、早く心肺蘇生を開始します。そして、実際に緊急を要する状況に接した際は、119番通報をして救急車要請をします。119番通報に関して、近年ではスマートフォンが社会全体に普及しました。もし、救助者が一人であっても携帯電話やスマートフォンから119番通報をして、スピーカー、ハンズフリー機能を使って、通信司令員に傷病者の状況を伝え、救急隊到着までに必要な応急手当やその方法を電話で口頭指導を受けながら、ただちに心肺蘇生を開始することができます。

こうしたことからも、心停止(心肺停止)という緊急時に居合わせた人が、119番通報とともに救急隊到着までの間に、救助者として心肺蘇生の開始を積極的に意識すべき大切さを窺い知ることができます。

総じて「判断に迷いが生じた」場合であっても、心肺蘇生を開始し、口頭指導を受けながら対応しつつ、救急車の到着までの時間が重要なのです。

肺と心臓の関係

ここからは体内のメカニズムを説明しながら、死戦期呼吸が起こる背景を述べておきます。そのことにより、心肺蘇生を開始するかどうかの判断にも役立てていただけることと思います。

以下、キーワードとして、「呼吸が止まれば心臓も止まる」・「心臓が止まれば呼吸も止まる」を示しながら述べてまいります。

〈呼吸停止 → 心臓停止〉
 呼吸停止が原因で心臓も止まることを、呼吸原性の心肺停止と言います。心臓が拍動するのは、心臓のまわりの筋肉、心筋の伸縮によります。心筋が伸縮するには酸素が供給されなければなりません。ところが、窒息や溺水などの呼吸停止で、体内に酸素を含む空気が届かなくなると、やがて心臓は止まらざるを得ません。

〈心臓停止 → 呼吸停止〉
 それとは逆に、心臓自身のトラブル、たとえば心臓発作や心筋梗塞などによって心臓がけいれんした場合、体内に血液を循環させるポンプ機能を果たせなくなります。

三木清没後80年に寄せて 室井美千博氏11月7日

志半ばの獄死 「三木清氏(評論家)二十六日午後三時豊多摩拘置所で急性腎臓炎で死去した。享年四十九、兵庫県出身。三高講師を経て独仏に留学、帰朝後法大教授、著書に歴史哲学その…

三木清 非業の死から80年 岩田文昭氏10月27日

三木の思索の頂点なす著作 三木清(1897~1945)が豊多摩刑務所で非業の死をとげてから、今年で80年を迎える。彼が獄中で亡くなったのは、日本の無条件降伏から1カ月以上…

《「批判仏教」を総括する⑦》批判宗学を巡って 角田泰隆氏10月20日

「批判宗学」とは、袴谷憲昭氏の「批判仏教」から大きな影響を受けて、松本史朗氏が“曹洞宗の宗学は、「伝統宗学」から「批判宗学」に移行すべきではないか”として提唱した宗学であ…

排外主義への警戒 日常レベルの交流が重要(11月5日付)

社説11月7日

宗教法人の悪用防げ 信頼回復のための努力を(10月31日付)

社説11月5日

意思決定支援の試み その人らしさの重要性(10月29日付)

社説10月30日
「墨跡付き仏像カレンダー」の製造販売は2025年版をもって終了いたしました。
長らくご愛顧を賜りありがとうございました。(2025.10.1)
中外日報社Twitter 中外日報社Facebook
このエントリーをはてなブックマークに追加