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庫裏改装し図書館運営 ホーム入居者らも集う

大阪市住吉区 真宗大谷派受念寺 岸上仁副住職

土間エリアと床エリアが大テーブルで一つにつながる独特の構造。仏教書が並ぶ棚にはもともと内仏があった 土間エリアと床エリアが大テーブルで一つにつながる独特の構造。仏教書が並ぶ棚にはもともと内仏があった

大阪市住吉区の真宗大谷派受念寺副住職で、脳神経内科医でもある岸上仁氏は昨年4月、旧庫裏を改装して私設図書館「念々堂」を開館した。カフェのようにくつろぎながら先人の知恵の宝庫に触れられる場所を目指すが、スタッフとして参加した老人ホーム入居者が元気を取り戻すという思わぬ出来事も。「肩書なく話し合い、日常で起こる問題を確かめ、人間を学ぶことができる場所になれば」と話す。

むき出しの木材を生かしたカフェ風の空間に約1500冊が並ぶ。7割はもとからの私物の蔵書だ。利用者は登録している人だけでも160人以上いる。資金は持ち出しでボランティアの手を借りて運営している。仏教書の輪読会や、仏教の視点で病気を考える勉強会を開く他、外部に貸し出すこともある。

今年亡くなった父からは「好きなことをしてよい」と言われ、大阪医科大、大阪大大学院で学び医者になった。しかし難病治療などに携わる中、様々な悩みにぶつかり「医療は実は人間の一部分しか見ていないのでは」との疑問が湧いた。ちょうどその頃、父から寺を継ぐよう求められ大谷大に編入。大学院にも進み、唯識を専攻した。

仏教を学び直すことで医学の領域では学べなかった視野を得られ、歴史に耐えてきた古典の奥深さを実感した。「生老病死という普遍的な問いを確かめる姿勢を学んだ」

旧庫裏が築40年以上たち修理の必要に迫られた時、大学時代に感じたような知恵に触れられる場所をつくりたいと図書館への改装を決めた。「誰かのためというより自分のためだった」

構造上の特徴は、土間のエリアと床のエリアが一つの空間に共存すること。中央の大テーブルには椅子席と掘りごたつ式の席があり、靴の人も素足の人も一緒に並んで話し合うことができる。

床部分は、隣接する寺の本堂や老人ホームとつながっている。お参りに来た門徒やホーム入居者も気軽に素足で図書館に移動でき、入居者が外部の人と触れ合う場所になる。これが想定以上に機能した。一時期、ある入居者の元気がなくなり、引きこもり状態になった。図書館を開くと通い始め、メモを取りながら本を読みふけるようになり、運営を手伝う中で生き生きとし始めて、やがてシルバースタッフの第一号となった。

岸上氏は「自分が求めるものだけでは視野が狭くなるので、様々な方のお薦めの本も取り入れていきたい」と意欲を見せた。

(武田智彦)

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