AEDの設置を
観測史上最も暑い6月だったが、容赦ない暑さはまだまだ続く。法衣などを厚着する宗教者は熱中症にかかりやすいし、酷暑は様々な場面で多くの人の命を脅かす◆黄檗宗近畿地区協議会は10年弱前から、救急救命の講習会を毎年行っている。水分の取り方や熱中症予防、緊急時の心肺蘇生法など、実際に人形を使って心臓マッサージを学ぶ。本紙9日付では森俊英氏が心臓と肺の関係について論じた◆「呼吸が止まれば心臓も止まり、心臓が止まれば呼吸も止まる」。だが素人にはその見極めが難しい。呼吸が止まっているのにけいれんで呼吸しているように見える「死戦期呼吸」があるからだ。教育現場でもそれを見極められず助けられない命があるという◆停止した心拍を回復させるAED(自動体外式除細動器)を用いれば、判断に迷うようなケースでも心電図を解析し使用すべきかどうかが分かる。心肺停止から1分遅れるごとに生存率が10%ずつ低下するため、早期使用により生存率は大幅に向上する◆重要なのはAEDがどこにあるかだ。緊急時に数分で持ってくることができるだろうか。AEDを設置する寺院も増えたようだが、残念ながら設置率はそう高くない。教えや法話で命の大切さを説くことは当然だが、老若男女が集う宗教施設にAEDを設置するということも、命を救う重要な取り組みではないだろうか。