創立150周年を迎えた同志社大学長 小原克博氏(59)

2024年に京都市上京区の同志社大第35代学長に就任した。今年同志社創立から150周年を迎え、建学の理念や歩みを振り返り「歴史を重視し人や社会を変える同志社でありたい」と話す。激動する国内外の情勢、そこで果たすべき宗教者の役割や仏教界への思いなどを聞いた。
椎葉太貴
混迷する世界情勢をどう見ていますか。
小原 トランプ大統領の鉄板支持層は福音派です。トランプ大統領はジェンダーや中絶問題など保守的なクリスチャンが重視している問題を取り上げています。またトランプ政権は移民排斥の代弁者となっており、バンス副大統領は聖書で正当化しています。トランプ政権の政策の中心と大統領や副大統領の聖書理解は一体不可分です。社会全体の分断とキリスト教内の分断をどう乗り越えていくかが今後の課題となります。
中東情勢の背景には米国の関与があります。イスラエル支持の政策は現在、中東の不安定化につながっています。イスラエルの建国は神の摂理で同国への支援は米国の義務という考えもあります。
ウクライナ情勢を見ると、ウクライナは旧ソ連圏で同国とロシアは宗教的に正教会という共通点がありますが、血で血を洗う戦争に突入しています。ロシア正教会はプーチン大統領のために祈り戦争を正当化しています。米国とは異なる形で宗教が国のトップを支えているのです。
私たちは戦争とは無関係だと思いがちですが、そこに宗教者が果たすべき役割があります。積極的に考えを示したりアクションを起こしたりして模範を示すべきでしょう。私たちは戦争と平和に対して鈍感になりがちですから。
日本国内では秋に安倍晋三・元首相の銃撃事件の初公判が奈良地裁で開かれます。
小原 この事件は憲法で政教分離がうたわれているのにもかかわらず、政治家と宗教団体が癒着している事実を白日の下にさらしました。問題なのはこのような事態が生じた背景に深いメスが入らず、政教分離や信教の自由の理解が深まっていないことです。裁判をきっかけに理解を深めていくべきです。
というのも宗教と政治の問題はここ数年で始まったのではなく、明治初期からの問題だからです。キリスト教や同志社も軍部の監視対象となり、治安維持法による検挙や逮捕、思想弾圧もありました。
同時に今年は戦後80年の節目です。宗教が国家に協力した歴史を各教団が振り返り、歴史の教訓を導き出すことが重要です。…
つづきは2025年7月9日号をご覧ください