相承される思い
曹洞宗大本山總持寺を開いた太祖瑩山紹瑾禅師の700回大遠忌の本法要が無魔成満した。21日間にわたる本法要期間中、全国各地から多くの宗侶や檀信徒が總持寺を参拝し、正伝の仏法を全国に敷衍した瑩山禅師に報恩の誠を捧げた◆各会派や地域から推挙された焼香師は、それぞれに特別な思いをもって法要に臨む。本山貫首に代わって法要の導師を勤める焼香師。ある老師にとっては、師である父の果たせなかった夢であり、またある老師にとっては、住職退董を控えた最後の晴れ舞台だった◆老師らに、前回の大遠忌の際の思い出を聞いた。雲水として接茶寮で慌ただしく働いていたこと、宗務所の所員として団体参拝の檀信徒を引率したこと、焼香師を勤める師の背中を眺めたこと。50年という歳月の重さを感じ、ふと50年後の宗門に思いをはせた◆次の太祖の大遠忌は西暦2074年。今、安居中の雲水や青年僧が老僧となり報恩の香を焚くことになるのだろうが、不安視する声も聞こえる。宗門の得度者はここ20年で半減し、僧侶の道に進まない子弟も少なくないからだ◆太祖は「仏の言く 篤信の檀那 之を得る時 仏法 断絶せず」と説いた。大遠忌を通して肌で感じた老師らの太祖への思いは、間違いなく檀信徒に伝わり、正伝の仏法は受け継がれるだろう。相承の瞬間を目の当たりにし、未来への希望を感じた。(奥西極)