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旧統一教会解散命令請求 「宗教」と「家族」 動きに注視

京都府立大教授 川瀬貴也氏

時事評論2023年11月1日 09時15分

この10月12日に、政府はある意味思い切った決断を下した。それは「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」に対する宗教法人の解散命令請求を東京地裁に申し立てることとなったのだ。

教団に対する解散命令請求は、本紙の読者諸賢はよくご存じのように、過去に2例しか存在しない(サリン事件を起こしたオウム真理教と、霊視商法詐欺が摘発された明覚寺)。過去の事例との相違点は、「民法の不法行為」が解散請求の根拠になった、ということである。

教団側は「当法人を潰すことを目的に設立された左翼系弁護士団体による偏った情報に基づいて、日本政府がこのような重大な決断を下したことは痛恨の極みです(10月12日付のプレスリリース)」とまで述べて「徹底抗戦」の構えのようである。

例の安倍晋三氏の事件以降、堰を切ったように旧統一教会やいわゆる「宗教二世」の関連書が刊行された。実は私も『これだけは知っておきたい統一教会問題』(東洋経済新報社、2023)という書籍で一部を執筆している。

宣伝めいて恐縮だが、簡単にこの書の内容を紹介すると、本書が重視しているのは歴史的文脈、国際的文脈の中で統一教会問題を捉えること、具体的には「韓国キリスト教の〈異端〉の系譜」「植民地支配とその記憶」「朝鮮戦争からヴェトナム戦争、冷戦体制下と反共理念」「冷戦崩壊後の宗教右派の政治力拡大との関わり」から、統一教会問題の「淵源」を解き明かすことを眼目にしたものである。どちらかと言えば、「公共空間における宗教のあり方」を問い直したものである。

一方、「合同結婚式」や「保守的な性道徳、結婚観、家族観」など、性と家族という「私的空間」の問題も旧統一教会に関しては無視することはできない。「信仰」と「家族」という、自分で選んだわけでもないものに人生を左右される、というのが「宗教二世」の共通の苦悩と言い換えることもできるが、彼らの苦しみは家族内の問題とされて「相談する人がいなかった」というのは数々の手記において繰り返し語られている。

例えば、塚田穂高編『だから知ってほしい「宗教2世」問題』(筑摩書房、2023)では、そのような宗教二世の声が複数掲載されており、行政や公的機関にどうつながることができるかが問題解決の条件との指摘もある(松田彩絵「第11章 宗教2世の現実と支援」)。

先日、埼玉県議会で子どもだけの外出や留守番までも「虐待」とする虐待禁止条例の改正案が提出され、大きな反発を呼び撤回されたが、このような動きは、ポリタスTV編『宗教右派とフェミニズム』(青弓社、2023)で指摘されている宗教的信念を含む右傾化の流れと軌を一にするものであろう。

宗教と家庭という、いわば「聖域」とされてきた場所に公権力が介入するのは最小限にするべきと私も思うが、今回の「解散請求」もこの流れに棹さすことになるだろう。今後の公的機関と家庭、そして宗教の関係の動きを注視せざるを得ない。

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