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カスタマーハラスメントの心理 高齢社会に潜む陥穽

北海道大大学院教授 櫻井義秀氏

時事評論2024年7月3日 09時45分

UAゼンセン(全国繊維化学食品流通サービス一般労働組合同盟)は、2024年に実施した210組合の約3万人を対象としたカスタマーハラスメント調査の結果を公表した。

この調査結果を各紙が報道。鉄道会社や運送会社は対応マニュアルを整備し、東京都を初め複数の自治体がカスタマーハラスメント防止条例の整備に取りかかっているという。

セクハラは平成18年に、パワハラは令和元年に、労働者を守るために必要な措置を行うことが事業者に義務化されているが、カスハラについては法律上の定義も義務づけもまだなされていない。

しかし、対面で大声をあげる、長時間拘束したり、土下座を要求したり、返金のみならず謝罪のカネまで要求するなど、度を超した客の要求は側聞することがある。宅配の事業所でチェーンソーを作動させて「さっさと荷物を出せや」などと大声を出して逮捕されたものすらいる。SNSや客の嫌がらせで閉店した店もある。

私は自宅付近を歩いているとき、追い越していったBMWに乗ったスーツ姿の中年男性に「さっさと歩け、ボケ」と怒鳴られて呆気にとられたことがあった。怒る、キレる人間が多いことは感じていたが、この調査結果も如実に誰がキレているのかを示している。

カスハラを行う客は、男性が70%であり、年代は50代27%、60代29%、70代19%と中高年が75%を占める。

だからオジサンさんはイヤだよね、と若者や女性に言われる前に反省したいものである。

学生にこのことを話し、オジサンたちの心理を解読してもらった。

①会社での役職(現職や元)に伴う説教や注意を、外の社会でも横柄に行うかんちがい。

②SNSでさらすぞ、といったネット社会での弊害が、カスタマー優位を生み出している。

③サービス産業に女性が多いことから、オジサンが粗野なマンスプレイニング(相手を見下してさとそうとする)を実践。

なるほどである。2020年調査と比較して70代が8%増加したことも気がかりだ。

政治に怒れる高齢者ならば拍手だが、カスハラに溺れる高齢者は見苦しい。勤め人人生を全うしてリタイアする男性が増えれば、この傾向は強まるかもしれない。

私も今年が定年なので他人事ではない。組織の上下関係、発注元と業者、教える人と教わる人といった世界に脳が慣れきっているとアブナイ。高年齢者は「役割なき役割」に適応し、タダのオジサン・オバサンとして生活し、唯一のプライドが「客の立場」といった発想を手放すべきだろう。

人が素の人間として生活するとき、敬意を以て相手に接しなければ相手にされないし、会話も成立しない。そういうことに時々気づかせてくれる人間交際の場所が失われていることをカスハラ現象が暗示しているのか。

アンガー・マネジメントも大事だが、素の人間に戻れる時間と空間を手に入れることが先決ではないか。宗教人に、よもやこんなことはないかと思うが。

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