列島縦断 日本の墓 失われゆく墓石を訪ねる…関根達人著

日本各地の墓を幅広く紹介し、様々な墓の姿から日本人がどのように死者を悼み葬ってきたかに迫る。時代や地域、階層によって墓の在り方は大きく異なり、「墓の写真集」と呼べるほど多く収録されたカラー写真から、墓石の多様性とともに人々の死の受け入れ方が伝わってくる。墓じまいや散骨が広がりつつある今、死生観や弔いの意味を考えるきっかけになる。
本書では、土饅頭、その上に石や卒塔婆、五輪塔を設置したものなど、埋葬の歴史をたどっていく。鎌倉時代には宝篋印塔、板碑が各地に展開し、15世紀になると石塔の小型化や規格化が進み多くの人が建立できるようになったという。著者は「古今東西、墓は社会を映し出す鏡」と記す。
江戸時代に入ると庶民も墓石を建てるようになり、故人の略歴や辞世などを刻んだ墓石が現れ「造立目的が供養・逆修から墓標や故人・先祖の顕彰へと変化したことを物語っている」と分析する。
両墓制の埋め墓・参り墓、墓石文化のなかったアイヌや琉球にも目を向けるほか、絵師狩野探幽の瓢箪形、小原庄助のモデルとされる会津塗師久五郎の徳利形、杉の木を墓標とした常陸谷田部藩主細川家の墓所など、個性的な墓の姿も興味深い。
定価2420円、吉川弘文館(電話03・3813・9151)刊。