非道が過ぎるイスラエル パレスチナ国承認を早く(9月5日付)
「大イスラエル」構想というらしいが、旧約聖書の「約束の地」を根拠に占領地域のガザ、ヨルダン川西岸、東エルサレムのほか元はシリア領のゴラン高原やレバノン南部など周辺諸国の領域をもイスラエル領と見なす思想と行動を指す。ネタニヤフ政権内の極右とされる宗教シオニズム政党がその実現を強硬に主張しており、占領地域の子どもたちを飢餓に追い込み、虐殺し、暴力的に入植地を拡張するのも「大イスラエル」構想が背景にあるという指摘がある。
それによればガザへの執拗な攻撃も、住民を排除し領土化を確定するためだ。ハマスのテロが、結果として強大な軍事力により構想に弾みをつけたことになる。
国連決議も国際法も国際人道法も、まるで意に介さないイスラエルの非道は、人類がたどり着いた命の尊厳と人権尊重の世の秩序を根底から覆すものだが、国際社会はそれを止めることができない。
「人々が苦しむ所が地獄なのではない。人々が苦しんでいるのに見向きもされない所が地獄なのだ」という言葉通りに、パレスチナの人々の苦難が果てしなく続く。
米国トランプ大統領の過剰な親イスラエル姿勢が、非道に拍車をかけている。聖書を文字通りに解釈し、パレスチナ地方のユダヤ人支配をキリスト再臨と重ねて考えるキリスト教福音派はトランプ氏の岩盤支持層だ。福音派は米国人口の4分の1を占めるという。
トランプ氏とイスラエルの一体化は、米軍による6月のイラン空爆がネタニヤフ首相の要請で行われたことにも表れた。この時、福音派指導者が「神が(略)トランプ大統領を我々に贈ってくれた」と語ったと報じられていた。
もう一つの要因が、米国内のいわゆるイスラエル・ロビーだ。米国の著名な二人の国際政治学者の共著『イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策Ⅰ・Ⅱ』は、ロビーが選挙の資金支援などによって米国の政・官界やマスメディアも巧妙に操り、米国の外交政策をイスラエル寄りに仕向けているさまを克明に明かす。その上でパレスチナ対策などに見られるロビー活動の弊害を強く訴えている。
同書の発行は2007年だが、弊害はトランプ政権誕生で頂点に達していると言ってもよかろう。
そうした状況の中、何ができるだろうか。選択肢の一つは、パレスチナ国家の承認を急ぐことだ。既に約150カ国が承認し、欧州でも承認する国が出始めたが、日本は米国に遠慮してか、未承認のまま。「これが仏教徒の国なのか」。そんな批判が起こりかねない。