子ども食堂が培う社会性 世代超えつながり育む
大阪大教授 稲場圭信氏
子ども食堂に10回以上参加したことのある子どもと保護者は、「悩みを相談できる人がいる」「困った時に助けてくれる人がいる」と回答する割合が高いことが明らかになった。これは、認定NPO法人「全国こども食堂支援センターむすびえ」が2024年にのべ1万844人を対象に実施した「こども食堂への参加者の変化を捉える定量調査」の結果だ。子ども食堂への参加回数が多い子どもほど、他者への信頼感が高いことも示されている。多様な人が参加する子ども食堂は、子どもたちが多様な人々と交流を重ねる中で、自身の社会性の向上などを感じやすくなる場として機能していると考えられる。
このように、子ども食堂は単なる食事提供の場ではなく、社会的包摂を促進するプラットフォームとして機能していると言える。その「むすびえ」は、大阪・関西万博会場で5月17日にシンポジウム「宗教施設におけるこども食堂と防災・復興支援」を主催した。このシンポジウムでは、石川県小松市にある真宗大谷派の西照寺の僧侶で「こまつ子ども食堂」代表の日野史さんが、「かなざわっ子nikoniko倶楽部」代表の喜成清恵さんと共に、能登半島地震での炊き出し活動を報告した。これは、平時における宗教施設での子ども食堂の活動が、災害時の共助の力につながる好事例だ。また、23年11月9日に増上寺で開催されたセミナー「宗教施設におけるこども食堂と防災」でも紹介された動画「こども食堂多様なカタチ~宗教施設とこども食堂」も上映された。
全国におよそ18万ある宗教施設のうち、避難場所や避難所などで地域の災害時協力関係がある施設は約4500カ所だ。一方で、宗教施設を拠点とした子ども食堂は全国に約200カ所と、まだその数は少ないのが現状である。地域防災や共助の観点から見ても、宗教施設における子ども食堂の運営は大きな「伸びしろ」がある分野と言える。
こうした中で注目されるのが、災害協力に取り組む宗教施設が子ども食堂の運営にも乗り出す動きだ。子ども食堂は、地域の子どもたちに食事を提供するだけでなく、世代を超えて人が集まり、つながりを育む場所でもある。このような拠点が地域に存在することで、災害時には炊き出し拠点や情報交換の場としても機能し、子どもからお年寄りまで、誰もが安心して避難・支援を受けられる体制が整う。また、宗教施設と地域が協力し、共同備蓄を行う取り組みも始まっている。消費期限を考慮しながら、食品を順次、防災イベントで活用したり、フードバンクに寄付したりすることで、無駄なく備蓄品を循環させる「ローリングストック型防災」も有効な手段だ。寺社をはじめとする宗教施設の多くは、日頃から町内会や自治体、社会福祉協議会、NPO、ボーイスカウトなど、さまざまな地域団体とつながりを持つ。こうした平時からの連携が、いざというときの共助の力として発揮されるのである。
宗教施設が地域に開かれ、子ども食堂などの活動を通じて日常的に人と人をつなぐことで、災害時にも支え合える強い地域コミュニティの再構築が可能になる。今こそ、その可能性を広げていく時だ。