宗教と災害支援 地域に根を下ろす活動の中で(7月9日付)
日本では病院のチャプレンが普及していないが、災害支援活動においては宗教者や宗教団体の働きが活発になされており、行政もそのことを認知する度合いが高まってきている。災害後にボランティアが大きな役割を果たすことは、阪神・淡路大震災以後、強く意識されるようになり、東日本大震災以後はそこで宗教者や宗教団体が果たす役割も広く知られるようになってきている。
災害直後には、様々な団体や個人が支援活動に参加する。しかし、被災地域ではすぐに全てが回復していくわけではなく、長期的に困難は尾を引き、喪失に伴う人々の心の痛みは長く続くことが多い。
そこで長期的に持続する支援活動が求められるのだが、宗教団体や宗教者は普段から地域社会に根を張って存続していることから、被災地で長期的に求められているものにも応じようとする構えを取りやすいところがある。
2000年代以降、震災や豪雨による被害が地域社会を襲うことがこれまで以上に増えてきていることもあり、宗教者の災害支援活動が活性化し、それは宗教と地域社会との関わりを見直す動きにもつながっている。分かりやすい例は日本臨床宗教師会の発足と展開で、東日本大震災での支援活動がきっかけとなっている。そして、その後の熊本地震や各地の豪雨災害や能登半島地震においても、多様かつ持続的な支援活動が行われてきている。
これは、そもそも宗教が地域社会に根を下ろしてきたところから、通常の地域社会の人々のニーズに応じていこうとする姿勢があってのことだろう。昨今の興味深い例の一つは、子ども食堂の活動に乗り出している宗教者・宗教団体が増えてきていることだ。子ども食堂を行っている宗教者や宗教団体が災害支援活動にも関わっている場合が多いのも注目すべきことだ。
もともと僧侶やお寺が葬儀に関わるようになったのも、故人の手厚い弔いを求める地域住民のニーズに応じていったという要因が大きい。その後、江戸時代に檀家制度ができて、政治的なてこ入れがあったのは確かだが、それに先立って僧侶の地域社会への浸透があった。
伝統仏教界でも、現在は檀家のケアをするだけでなく、その枠を超えて人々のニーズに応じようとする姿勢が目立ってきている。現代日本における宗教の課題を問う際、「地域社会での宗教」という視点が意義を増してきているのだ。