PR
購読試読
中外日報社ロゴ 中外日報社ロゴ
宗教と文化の専門新聞 創刊1897年
第22回「涙骨賞」を募集
PR
第22回「涙骨賞」を募集

祖師から現代へ 期待される宗教者の指導力(6月11日付)

2025年6月13日 09時24分

日本仏教の特質が形成される鎌倉期の祖師たちの中でも、法然、親鸞、道元、日蓮の存在は極めて大きい。12世紀半ばから13世紀末にかけてのほぼ1世紀半の間に、4祖師は時を連ねてこの世に生まれ、歴史の中に活躍の足跡を刻んで去った。いずれも比叡山で学んだ後に遍歴修行を重ね、法然、親鸞は専修念仏の教えを勧め、道元は只管打坐・身心脱落の道を開き、日蓮は法華題目を宣揚した。ヤスパースのいう「歴史の枢軸」となる時代を我が国に形成した仏教者たちである。

4祖師に先立つ最澄、空海という巨人を視野に入れて俯瞰すれば、日本仏教は、最澄の誕生から日蓮が没するまでの約500年の間に、公伝以後の葛藤を経て国家的受容から普及、さらに鎌倉新仏教の勃興へと展開する。天台・真言の教えを樹立した最澄、空海の時代は、やがて宗派同士が勢力を競い対立抗争を繰り広げ、災害や飢饉、戦乱の頻発によって世相は混乱を極めていく。祖師たちが相次ぎ世に出て活躍した背景には、不安定な時代社会があった。

法然の唱える専修念仏が今生の安心と死後の往生をもたらす教えとして朝廷、貴族から武家、庶民に至るまで、不安と絶望の日々を過ごす人々の心を捉えたのは、明日をも知れぬ当時の社会状況と、末法の到来という時代認識への自覚があったことは疑い得ない。法然と40ほども年の違う親鸞は、法然が『選択本願念仏集』を撰述した3年後に門下に入り、念仏禁圧の嵐が吹き荒れる中で法然らと共に流罪の身となった。道元は法然の没後に出家しており、建仁寺の明全と共に入宋して天童如浄和尚から仏祖正伝の法脈を嗣承して帰朝した。

道元入宋の頃に誕生した日蓮は、生涯を国家諌暁と邪宗の破折に費やし、ために伊豆、佐渡と長く流罪の時を過ごした。その熱量の高い行動的な言行と篤信者に対する温かい情愛は、人間的魅力として武士や庶民に広く慕われ、剛情な教団勢力を形成した。祖師たちのそれぞれの信念は、我が国の仏教の特質として今日まで様々な影響を及ぼしている。

祖師の時代から800年を経る現代世界は「テクノ新世」とも呼ばれる新たな変革のるつぼと化している。人類がかつて経験したことのないデジタル技術の発展はとどまるところを知らず、人知を脅かす次元に及んでいる。激しい変動の時代にあって宗教者に期待されているのは、やはり時代の本質を見極め、変革の中でたたずむ人たちに指針を示し、宗教的指導力を発揮することだろう。

社会的支援と宗教 救われると信じられるか(10月24日付)10月28日

社会的な諸課題に関連して宗教者が困難な状態にある人などを支援するということと、それが宗教者によるものであるということとの関係をどう考えるかという問題が、宗教者や学者らの研…

増大する電力消費 「原発依存」の未来でよいか(10月22日付)10月23日

原子力開発の研究者として若い頃は原子力平和利用の夢を抱いたこともある工学者の小出裕章氏は、福島第1原発の事故発生から4カ月後に『原発はいらない』という本を出版した。その発…

ユニット型ケアの普及 高齢者施設にこそ宗教者を(10月17日付)10月21日

特別養護老人ホーム(特養)では、従来は大半が主に4人の部屋(多床室)だった。だが、近年では各入居者に個室を提供するユニット型ケアが増えてきた。この方式では、10人程度のユ…

晋山式に先立ち角塔婆供養を営む川名法主

手を取り合い法燈護持 川名法主、晋山式で垂示 善光寺大本願

ニュース10月29日
全壊寺院のケヤキ材を使用したお守り。片側㊧に施主の写経が焼き付けられる

全壊寺院の木材、お守りに がれき、再生のシンボルへ 能登地震被災寺院を支援 曹洞宗群馬の教区

ニュース10月29日
大塚日正3世会長から正信4世会長への会宝授与

4世正信会長法灯継承 たゆまぬ精進誓う 「信者こそ会の宝」 日正前会長、感謝の言葉 法華宗本門流獅子吼会

ニュース10月29日
  • お知らせ
  • 「墨跡付き仏像カレンダー」の製造販売は2025年版をもって終了いたしました。
    長らくご愛顧を賜りありがとうございました。(2025.10.1)
  • 論過去一覧
  • 中外日報採用情報
  • 中外日報購読のご案内
  • 時代を生きる 宗教を語る
  • 自費出版のご案内
  • 紙面保存版
  • エンディングへの備え―
  • 新規購読紹介キャンペーン
  • 広告掲載のご案内
  • 中外日報お問い合わせ
中外日報社Twitter 中外日報社Facebook
このエントリーをはてなブックマークに追加