東西本願寺120のちがい…鎌田宗雲著

文字通り「東西本願寺のちがい」を教団組織や寺紋、荘厳、衣体、作法などの分野に分けて全120項目にわたって紹介している。著者は2023年に『親鸞伝と本願寺俯瞰 東西本願寺のちがい』も刊行しているが、同書出版後に寄せられた情報を踏まえて今回の新著にまとめたという。
本書では120項目の「ちがい」に加えて本願寺の始まりから東西分立の歴史的経緯も丁寧に解説しているが、とりわけ戦後の東本願寺教団(真宗大谷派)を揺るがした「お東騒動」に紙面の多くを割いている。
この騒動は大谷光暢法主をはじめとする保守派と改革派の宗派内局が教団の主導権を巡って激しく対立したことで知られ、結果的に法主制度は瓦解した。著者は大谷派の教団改革運動には「今の教団が一般社会の悩みに対応できるようになる」という強い問題意識があったとする一方、現在も門主が強大な権限を有する西本願寺教団(浄土真宗本願寺派)の近現代史を「教団改革といえるものはありませんでした」と指摘する。
その評価の是非や、本書は「著者が所属する本願寺派から見た東西本願寺のちがい」という色彩を持つ点を差し引いて読む必要があるものの、両本願寺の比較を通して教団を相対化する視点を提供する貴重な一冊だ。
定価3300円、永田文昌堂(電話075・371・6651)刊。