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沖縄戦の遺骨収集と慰霊 「弔い上げ」はまだ終わっていない

京都府立大教授 川瀬貴也氏

時事評論2024年7月17日 10時47分

6月23日は「沖縄の日」である。この日は沖縄本島を中心に、沖縄戦の犠牲者に対する追悼式が行われる。各教団、各仏教宗派もそれに積極的に関わっておられるのは読者諸賢もご存じのことであろう。私も学生を引率して各自治体で行われる慰霊祭にお邪魔し、フィールドワークを何度か行っており、その場で僧侶、神職の方ともお話しさせていただいたことがある。

実は上記のような追悼式典の「外」で、継続的に行われている別の「慰霊」も存在する。「戦没者遺骨収集事業」である。厚生労働省の令和6年度の資料によると、琉球諸島や硫黄島を含む「海外」における戦没者は約240万人で、現時点での「未収容遺骨」はおよそ112万と概算されている(このうち収容可能性がある遺骨は約59万とされる)。現在も厚労省が音頭を取ってこの事業は続けられているが、ボランティアで遺骨収集を行っている人も数多く存在している。

その代表的な人物として、沖縄で40年以上も遺骨収集を継続している具志堅隆松氏が挙げられる。先日私は、この具志堅氏に密着して撮られたドキュメント映画「骨を掘る男」(奥間勝也監督)を鑑賞した。具志堅氏は自らを「ガマフヤー(壕を掘る者)」と称し(これは彼を代表とする遺骨収集グループの名前でもある)、主に沖縄本島南部の激戦地で淡々と遺骨を掘り(映画もそれを淡々と追いかける)、できればそれを遺族に送還するべく活動している(2003年以降はDNA鑑定も行われている)。映画のキャッチコピーにもなっていたが、具志堅氏は「あと10㌢で出逢えるかもしれない」と、金属探知機なども用いつつ、暗く、湿ったガマに日々赴いている。

この具志堅氏らの行動は何らかの政党や教団の支援、信仰に基づいたものではなく、いわば「市民参加型」のものである。社会学者の粟津賢太氏はこのような党派性の回避、中立性が活動をスムーズにさせた面を指摘している(『記憶と追悼の宗教社会学』北大出版会、2017)。宗教的なバックボーンがなくとも、具志堅氏は「遺骨に少しでも近づく」発掘作業を観念的な慰霊ではなく「行動的慰霊」と位置づけている。

ところが近年、かつての激戦地であり、未収容の遺骨が多く残存している糸満市の土地が、辺野古の新基地建設のための埋め立て土砂として調達されようとしており、具志堅氏はハンストでもって「これは死者の尊厳を冒す暴挙である」とその非を訴えた。この埋め立て計画は沖縄内外から反対運動を引き起こし、玉城デニー沖縄県知事も「人道的にも認めがたい」との意見を表明しているが、政府はその方針を基本的には変更していない。まるで政府は沖縄の「弔い上げ」が終わったかのような態度に終始している。

最後に一言。沖縄の遺骨収集に関しては、県民の4人に1人が死亡したという「身内」の弔いもさることながら、「内地」からやってきた多くの日本兵の遺骨も復興過程で収集せざるを得なかった、という事情を決して忘れてはならない。「死者」はまだ眠ってはいない。「内地の人間」は基地負担以外にも沖縄に大きな「借り」があるのである。

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