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宗教界もビジョン2100を 挑戦する宗教者の出現期待

北海道大大学院教授 櫻井義秀氏

時事評論2024年1月24日 09時37分

自然災害がいつどこで起きてもおかしくはない時代だ。能登半島の震災から2週間余が過ぎ、亡くなられた方のご冥福と被災者の生活復興を願う毎日である。

過疎地域に暮らす多くの人は、集落単位で避難所生活を続けられる能登の高齢者の姿に明日は我が身と覚悟しているだろう。復興の担い手となる若者や子どもがいてほしいが、二次避難先で新しい生活を築きあげる若い世代の選択があってよい。

少子高齢化による人口減少社会のリスクは、災害時や復興過程で顕わになる。縮小する日本を変えなければと考えた民間有識者の人口戦略会議が「人口ビジョン2100」をこのほど公表した。

日本の人口は現在の出生率(1・34)のままだと、2100年に約6200万人と半減し、高齢化率は2040年頃から約40%のまま推移する。労働力不足・社会保障費の負担で日本の国力が大幅に減退し、地方消滅が現実化する。8000万人の人口規模で日本を維持しようというのが、このビジョンである。

方策は三つ。①人口の定常化のために出生率2・07を目指して若者の労働環境・女性の育児環境においてあらゆる改善を試みる②経済の強靱化のために人材に投資し、産業の生産性を上げる③高技能を所持する永住外国人を受け入れる。

『中央公論』でこれを読んだが、机上の提言にがっかりした。決定打と具体策に欠ける。

女性の結婚しない、子を持たないという選択を尊重するのであれば、子育て世帯に3人お願いしなくてはこの出生率にならない。育児期の該当する十数%の世帯に子ども1人当たり年間100万円くらい、20年間育児手当を出してこそ負担軽減策といえる。むろん、国民が税負担する。

経済の生産性を上げるには、最低賃金を時給2000円に上げて他の先進国並みにするのが先決である。途上国並みの賃金と物価で安い労働力を維持して輸出産業を支援し、インバウンド頼みで経済を回したこれまでの30年に終止符を打つことだ。

私の奇策を示せば、高齢者の定義を65歳から75歳以上とし、それまで誰でもそれなりに働き、最低賃金を得て、年金支給開始を繰り上げ、医療費負担も現役並みにすれば、高齢社会の問題は解消する。農家や漁師、職人や士業、介護の人たちは既にやっている。健康寿命も延びよう。

では、宗教界は2100年にどう対応していくのか。プランはあるのか。

私の予測を記す。伝統宗教・新宗教共に家族単位で信仰継承が望めず、若い世代で世俗化が進行するのであれば、ほとんどの宗教団体や施設で運営基盤は確保できないだろう。施設の維持費用や専従職員の給与も出せなくなる。

では、どうするか。とりあえずの兼業。布教で信者を増やすのが最も本筋だが、宗教不信の時代では出生率の回復並みに難しいだろう。布施の額を上げるのであれば、それに見合う役務の提供に知恵を絞り、腕を磨くしかない。

チャレンジする次世代の宗教者が出現すれば、宗教は復興する。困難な時代にこそ、本物が現れるのではないか。

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