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2024宗教文化講座

多文化世界、他宗教へ理解を ― イスラム・ハラール通して(1/2ページ)

大阪芸術大教員、国際交流事業会社取締役 佐藤真由美氏

2015年2月4日
さとう・まゆみ氏=1968年、旧東ドイツ・東ベルリン生まれ。文化大革命中の中国育ち。14歳で帰国して日本国籍を取得後、米国へ留学。航空工学と心理学を修め航空業界に。国連開発計画(UNDP)の職員としてアフガニスタン等に派遣。著書に『跳べ!世界へ エアラインから国連、国際NGOへ』(解放出版社)。

東ベルリン生まれの北京育ち、思春期を青森で過ごし、欧米の航空会社で仕事をして外国暮らしが長かった筆者には、多様な宗教が比較的身近だった。海外においては人々がそれぞれの強い宗教的文化を身にまとっているのはごく自然。現代日本社会はその希薄さに改めて驚く。現代日本人ほど宗教を意識も重視もせず生きている人々は世界的に見ても珍しい。

航空業界という職業上、多様な他者の宗教的立場に敏感に配慮するクセを身につけている。時折「日本で暮らした期間の短い私のほうが日本人らしい!」と感じる。何十万人もの観光客・巡礼者を受け入れている世界の聖地・聖蹟の観光産業のスケールの大きさや可能性をも日本はあまり理解していない。

世界を巡り様々な民族や人種の人々と働き、東西南北の諸国・先進国の都市部や発展途上国の農山村地域で共労した経験から、日本社会が多様な宗教を信じる世界の人々と共生できるポイントは、どれほど相手の文化に敬意を持って、宗教的配慮ができるかだと思う。対人関係や仕事の中で、相手への敬意や宗教への無理解は人間性すら問われてしまう。異国でのさりげない人々の言動の背後には強い宗教的生活規範が背骨のように厳然と存在している。

異民族や様々な宗教の人々が出会うグローバル社会や国際的外資企業では、差異を認め合い、お互い敬意を持ち、他者の宗教に敬意を払うことが重んじられる。つまらない諍いを未然に防ぐ不可欠な常識だ。

ユダヤ教徒、仏教徒やヒンズー教徒、儒教的思考を強く感じさせる同僚らと世界を飛び回った航空会社勤務時代には世界各国からのお客様の機内食、つまり宗教食の提供を当然のことながら日夜行っていた。食事というものは全世界の人々の宗教観や暮らしへの密着度、多様性を知ることができる一番わかりやすいメジャー、尺度と言える。

国際線エアラインではユダヤ教徒のコーシャ・ミールを代表にベジタリアンや多様な宗教に対応した30種類近い機内食を提供している。中でも近年日本国内でも注目を集めているのが、イスラム教徒のハラール・フード。その注目の理由は、最近のアジアからの観光客急増の半数がイスラム教徒であること。アジアのイスラム諸国の経済発展に伴う中産階層・富裕層増加、そして彼らの日本観光ブーム急拡大である。ビザ無し観光が可能になった総人口約3千万人のマレーシアに続いて、2億人を超える経済発展の著しいインドネシアの観光客にもビザ免除が近く開始、空前のイスラム教徒日本観光ブームが訪れようとしている。

ハラールとはイスラム教徒が口にしても良いとされる「清浄」という意味で、逆に食することのできない不浄なものはハラームと言われている。禁じられている食べ物でよく知られている豚肉やアルコールなどコーランに厳しく守るべき戒律として記述されている。

「信仰する者よ、われがあなたがたに与えた良いものを食べなさい。そしてアッラーに感謝しなさい。もしあなたがたが本当に彼に仕えるのであるならば。彼があなたがたに、(食べることを)禁じられるものは、死肉、血、豚肉、およびアッラー以外(の名)で供えられたものである。だが故意に違反せず、また法を越えず必要に迫られた場合は罪にはならない。アッラーは寛容にして慈悲深い方であられる」(第2章172~173節出典『ムスリムが豚肉を食べない医学的理由』より)

教義に即した食生活は、肉体的健康の維持という側面と同時に宗教的義務を遵守し精神的健全性の維持と浄化、高い道徳性を維持した日々を過ごすという意義があり、その自覚をイスラム教徒は強く持っている。

イスラム諸国では厳格に注意が払われているのだがグローバル時代の今日、ハラール対応食ニーズは日本でも急速に高まっている。

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