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宗教と文化の専門新聞 創刊1897年
中外日報社「宗教文化講座」

いのちの終わりを見つめ合う~医療者と仏教者の対話(2/2ページ)

浄土真宗本願寺派延命寺住職 德永道隆氏

2015年12月23日

やはり医療者、特に看取りに関わっている方にとって、日常が全人的ケアを目指して苦労をしているのに、そこに仏教者に何ができると言うのですか、という問いかけがあるように感じた。

医療者の「知」 仏教者の「理」

そのまま議論としては平行線で、会場の僧侶からの「どうしたら病院で活動できるか」との問いにも同様で、「何ができるかはっきりしていただかないと」「僧侶という立場を捨ててこられないとちょっと……」など、この度の講座開催のテーマでもある「仏教と医療の協働」ということには程遠い議論であった。

ある学会で医師が、「医療に宗教者が必要だと感じている医療者は、日本の場合1割くらいだろう」という話を聞いたことがある。そうだとしたら、この厳しい意見は、登壇いただいた2氏の個人的な感覚だけではないだろう。つまり、ほとんどの医療者には理解されていないということになる。

私のささやかな経験からすると、個人的に何かの信仰を持つ(あるいは自分の死についての思いを表出する)医療者とはかなり話をすることが多く、また協働していこうという感覚も持っているように思う。

逆にそうでない場合は、何となく一緒にやっているという感じがある。もしも、医療者という立場だけならば、医学としてのとてつもない「知」の中に「慈悲の徹底しない一人の人間が、仏教者という立場で共に悩みながらケアしていく」という感覚は理解しがたいものであろう。

仏教の説く縁起思想である「互いが依存しあって生きている」という「理」は、関わろうとする個人が主体的に内面を見つめながらしていくケアであり、それは、医学でいう「知を持って提供していく」ものとは違いがあるので評価しにくい面がある。ならば、これから「仏教と医療の協働」には何が必要だろうか。

医療者へのケアと仏教者の研鑽

これは全く私見にすぎないが、この度の講座を契機に改めて考えたことが2点ある。

それは、ケアといってもまず医療者のケアからはじめなくてはならないということがある。もちろん、そのためにまず医療との関わりがなくてはならないという点はあるが、医療者も様々なことで悩んでいることには違いはないのである。

病院に関わって半年くらいの時、ある医師に廊下で呼ばれて「診察室に来てくれ」と声をかけられたことがある。「何ですか」と診察室で聴くと「あなたはここのスタッフをどう思うか」という質問をきっかけに、その医師が抱えるスタッフへの不満を1時間近く話されたことがあった。何か解決した訳ではなかったが、これは必要なことだと感じた。

またある時は、看護師が、亡くなった患者への後悔の念が離れず、いつも夢に出るという話を聴いたこともあった。この看護師には仏教の話を少ししただけで随分落ち着いたということもあった。

これらのことからも、医療者のケアをまずしなければ、その先の患者、家族のケアにはたどり着かない感がある。

そして、2点目は研鑽を深めていくということである。ここ数年、臨床宗教師のことが話題になることがあるが、私はその研修を受けてはいない。しかし、何らかの形で研鑽はかなりしていかないと医療者に信頼されないだろう。広島で現在、数人の仲間と研鑽の場を創る計画がある。いずれにしても、仏教者がどこまで本気でケアすることに力を注ぐかが問われている。

対話の継続

以上、この度の公開講座を開催したことによる一人の仏教者の思いを記した。科学的見地に立っていのちを診る医療と、無量寿のいのちを感じながら共に生かされていることを前提として観る仏教者との連携は、記したように、まだまだ模索の段階であることを拭い切れない感がある。

医療者も仏教者も門信徒も皆、死に逝く身であり、支えるいのちがいつかは支えられるいのちであることを今後も立場を超えて議論していくべきであろう。それが「いのちの協働」であることを願うばかりである。

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