信心素描 おやさまに導かれた女性…伊橋幸江著

およそ信心というものは、教祖一人で終わるものではない。教祖の教えがその周辺に伝わり、周辺の一人一人が教えを実践することで教えの正しさが証明され、さらにその輪が広がっていく。天理教では、共に「陽気ぐらし」を楽しもうと人間世界を創始した親神様(天理王命)のお告げ(啓示)を、自ら筆を執って書き記した中山みきという女性を教祖とし「おやさま」と呼んでいる。
本書に登場する9人の女性は、おやさまのそばで親しく仕えた人である。天理教の教えに導かれた人は誰しも、真に「生きる」ということに目覚めて、陽気ぐらしの世界に生きた人たちだと言える。その中でも、おやさまのそば近くで直接に指導を受けた女性の生き方や言葉を「素描」という形で書きつづった本書は、おやさまの導きで心の目を開かれた先人としての経験を生き生きと伝えている。
1900(明治33)年に女性で唯一の本部員を拝命した増井りんの晩年の言葉が紹介されている。「私の身も心も、教祖の思惑通りですのや、私がなんぼ考えても私の思い通りになりませんのや」「私心は少しもありません、仰せ通りに一日一日が楽しみで、勤めさせて頂いていますのや」――こんな言葉からは、神様の守護に身をあずけて日々を陽気に生きた信心のありようが知られよう。
定価1210円、天理教道友社(電話0743・62・5388)刊。