蒼天の星 星見天海評伝…関根則男著

天皇を中心とする祭政一致の国家を目指して明治政府が打ち出した宗教政策は、廃仏毀釈と相まって伝統仏教教団を大いに混乱させた。永平寺と總持寺を両大本山とする曹洞宗では、一宗一管長を置かねばならなくなったことで不和が生じ、確執は深まり、1892(明治25)年には總持寺が曹洞宗からの離脱を宣言する大事件へと発展した。
本書は「両本山分離問題」と呼ばれるこの事件を解決に導いた越後柏崎・福勝寺19世の星見天海(大雄山最乗寺独住第4世/1833~1913)の評伝。
同じ柏崎出身の小説家である著者が「世に知られざる高徳の名僧」として天海の関係先へ取材するとともに、残された資料をひもとき、今日まであまり積極的に語られることのなかった騒動の真相に迫り、天海の人柄とともにリアリティーあふれる作品に仕上げている。
1893(明治26)年に、当時の内務大臣だった井上馨から天海が事件の仲裁役に抜擢されたのはなぜか。どうやって永平寺、總持寺の両方を立てた形で、94(同27)年に事件を解決に導くことができたのか。なぜ總持寺貫首就任を断り、隠棲したのか。小説になったことで、それらを読み解くことができよう。
定価1650円、考古堂(電話025・229・4050)刊。