正法眼蔵 全 新講 第二巻…南直哉著

曹洞宗大本山永平寺で約20年間修行し、現在は恐山菩提寺の院代を務める著者が、「無常・無我・縁起」の立場から道元禅師の主著『正法眼蔵』全87巻を講読する新シリーズの第2巻。「一顆明珠」巻から「光明」巻までを読み解く。観無常の立場で心を論じる「心不可得」巻、無常である心がどのように現成するかを説く「古仏心」巻、二元論と物事の実体視を排する「空華」巻などを一貫した立場で解説する。
著者は『眼蔵』を講読するに当たって「無常・無我の立場を堅持し、形而上学的・超越的存在を一切認めない」「あらゆるものは縁起から生成される」「行為が縁起を具体的に実現させる」「言語が縁起する実態を実体と錯覚させる」という4原則を自身が依拠する考え方としてあらかじめ提示した。講読の方法を先に示し、その原則に従って『眼蔵』全巻を読み切る試みは初めてで、第1巻の刊行当初から高い注目を集めた。
本書でも、特定の体験を「悟り」として実体と見なす態度を排除するなど、実体視された概念を解体し、再定義しようとする『眼蔵』に忠実に読み進めている。「坐禅儀」巻の解説では『眼蔵』の主張と思想の根底にあるものが坐禅という身体技法であることが明確に理解できるよう工夫されている。
定価4620円、春秋社(電話03・3255・9611)刊。