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人口減少・世俗化と寺院 ― 仏教の現代的あり方追求へ(2/2ページ)

北海道大大学院教授 櫻井義秀氏

論2016年6月29日
信徒を集める寺院とは

先祖祭祀と檀家制は現代の日本仏教において根幹をなす制度だが、原始仏教教団や世界各地に拡大した現代の仏教においてもそうかといえば、やはり日本の宗教民俗や近世の寺檀制度と近代の寺院仏教の興隆によって作り上げられた独特な制度とみるべきだろう。住職の世襲による寺族の生活基盤の確保もまたそうである。現代の社会と家族の有り様が大いに変わり、往時の先祖祭祀と檀家制を維持できなくなっていくのであれば、その他のやり方で仏教の伝統を維持継承してもよいのではないか。

とはいえ、それが簡単ではないことも承知している。将棋で言えば飛車角に相当する先祖祭祀と檀家制を手放して勝負できるのか、多くの僧侶が不安になるのも当然である。

いささか宗教学的な定石であるが、歴史的事例があるので記載しておこう。ポイントは寺院の維持管理と僧侶の生活を軽くして、布教・教化の実践を強化する、ということに尽きる。

①出家者型仏教
 東南アジアの上座仏教や中国・台湾・韓国の大乗仏教の寺院は、寺院にもよるが、広範な信徒層と地域コミュニティーによって支えられている。僧侶は托鉢や布施のみで生活するので経費もかからず、布施が多ければ寺院の社会事業として地域社会への還元がなされる。この形態は一部修行者型の僧侶によって日本でも維持されているが、多数派にはならない。

②在家型仏教
 日本の仏教系新宗教は専従職員の数百倍数千倍に達する大勢の信徒によって支えられている。慈済会や仏光山のような台湾仏教は、数百人単位の出家者を数十万人の信徒が支える教団型宗教であり、寺院仏教と在家主義仏教系新宗教の中間的形態ともいえる。この類型は宗教運動的な布教と教化システムがなければ維持できず、現代の貧病争に切り込んで共感共苦する情熱と能力がなければ、伝統仏教が新宗教とも競合する現代的宗教社会に割り込む余地はなさそうである。

③兼職・セカンドライフ型仏教
 先祖祭祀や檀家制に立脚しながらも財政的基盤が弱いために、住職の家において兼職(住職が寺以外に仕事を持つか、住職を引退するまで子どもが別の職に就く)をするか、セカンドライフとして発心した人が年金や自己資金で寺院を運営する。ほぼほとんどの宗派で採用されているやり方であるが、地方では兼職自体が難しくなっているので限界がある。セカンドライフ型は妙心寺派のシニア世代僧侶育成プログラム他、門戸は開かれつつある。

④祈願寺と葬儀寺
 現世利益と死者供養を伝統に則りながら、現代人のニーズにも合わせて人々の願いを徹底して追求しようという寺院である。若者世代は祈願や願掛けといった儀礼に親和的であるし、終活を真剣に考える高齢者は増える一方である。集合墓による縁作りを手がける新潟の妙光寺や施主本位の葬儀をクリエイトする長野県松本の神宮寺他、少なからぬ寺院が檀家頼みではない運営を可能にしている。

⑤イノベーション型仏教
 前記の類型に入らない、インターネットや街中スペースを利用して寺院という社会空間で仏教の現代的あり方を追求しようという野心的な試みがなされている。未来の住職塾を主催する彼岸寺や街中空間の應典院ほどに先駆的ではなくても、可能な範囲で地域や檀家、宗派を超えて「つながり」「居場所」を作ろうという新世代の僧侶は増えている。

さて、私は④と⑤は住職の並外れた構想力と持続力を必要としている点で志のある若い僧侶にめざしてほしいと思うが、③のセカンドライフ型も推奨したい。住職がいないのであれば、檀徒や信徒が住職の役割を継承してもよいではないか。現代の複雑化した社会では、発心した社会経験豊かな世代の力を活用する方が仏教の現代化に資するかもしれない。

私は人口減少と世俗化を奇貨として現代仏教の革新がなされるのではないかと期待している。

※櫻井義秀・川又俊則共編『人口減少社会と寺院―ソーシャル・キャピタルの視座から』本体価格3000円、法藏館刊

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