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弟子丸泰仙老師ヨーロッパ布教50年に寄せて(2/2ページ)

曹洞宗大乘寺山主 東隆眞氏

2017年3月31日

そもそも、老師は、1965(昭和40)年、遷化直前の澤木興道老師の得度を受けて弟子となった。澤木老師の家風は、悟りの体験を否定した只管打坐に尽きる。澤木老師の遺した坐布、袈裟、法衣を着けて、67(昭和42)年7月、単身シベリアを経由してフランスに到着した。渡仏にあたって、松永安左衛門、原安三郎をはじめ、財界人の援助を受けたという。

そして、十二、三年の間に30万人を超え、常時、十数万人が参禅するに至るという「弟子丸ブーム」を巻き起こした。

フランスに赴いた直接の動機は何か

老師によれば、50歳を過ぎて出家した実業家弟子丸泰雄が、恩師である澤木老師の遺志を継承して、活力を失った日本仏教の現状に絶望し、仏教ないし坐禅を求めているヨーロッパに直接赴いて、坐禅に励みたいという点にあった。

そこで、現在のヨーロッパ文明の特徴、利己主義、知育偏重を指摘し、ヨーロッパ、全人類を救済する運動を掲げた。同時に日本仏教の現状とくに直接かかわっている僧侶の現実を厳しく批判した。そして、禅の本場は日本からヨーロッパに移るであろうとまで記している。実は私も、この点は、まったく同感で、至るところで、その点を話し、書いてきている。

こうして始まった老師の「ヨーロッパ禅協会」は、ヨーロッパばかりではなく、アフリカのモロッコ、アルジェリア、南アフリカ、カナダのケベック地方、ラテン・アメリカのフランス語圏に拡大していった、と記している。

さて、また老師は「誓願」を持つことを強調した。

ひとくちでいえば「誓願」とは、人生に対する、しっかりした目標、理想、生きがいである。仏教の僧侶は、いまや社会事業、福祉事業などキリスト教のまねをして慈善事業にうつつをぬかしている場合ではないと、老師はいう。

また、現代の青年諸君は「人間存在の原点にたちもどって、その最終、最高の使命をみいだし、それを目標に、諸君は現実の与えられた職場を修養の道場として、一歩一歩遠い未来にのしかかっていってもらいたい」という。

これは老師の誓願であったであろうし、いま、私自身の誓願であらねばならない。深く心に秘めたこの思いこそ、仏教者の生きる根源であらねばならない。

いま、弟子丸老師の門流たちは、全ヨーロッパに教化の網を張っている。今後、一層の協力体勢を固めて、仏仏祖祖正伝の正法を展開していっていただく誓願を新たにしていただきたい。

※弟子丸泰仙老師 1914(大正3)年、佐賀県に生まれる。横浜専門学校(現神奈川大)卒。森永製菓、三菱鉱業、スマトラ鉱山開発、松永安左衛門の秘書、アジア協会常務理事などを務め、また臨済宗の鎌倉円覚寺・朝比奈宗源老師、主として曹洞宗の澤木興道老師に師事。後に山田霊林禅師(アメリカの開教総監部総監。駒澤大総長、大本山永平寺貫首)に嗣法した。長野県・清久寺住職。巴里山仏国寺などを開創。全ヨーロッパに開教道場63カ所開設、信者三十余万を数えたという。ヨーロッパ禅協会設立。フランス国際仏教研究所副所長。大乗仏教研究所所長ほか。著書多数。しかし、弟子丸老師の伝記はまだ無い。

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