法然上人の教えとカウンセリング 凡夫が凡夫によりそう…浄土宗総合研究所編著

本書は、浄土宗総合研究所で進められてきた浄土宗寺院における対人援助に関する研究の成果をもとに「法然上人の教えに基づくカウンセリング」への基礎的な手引書、あるいは研修用のテキストとして刊行された。
法然の伝記や行状図などに示される相談場面から「どのような立場にある人でも分け隔てなく、深い悩みに寄り添い応えられた」として、それが最も大切な対人支援の原理と行為であると指摘。法然の教えにおける人間観をひもといた上で、その教えに合致するカウンセリングを提唱した浄土宗僧侶・中原実道氏(1929~2014)の理論や実践を解説している。浄土宗僧侶で漫画家でもある岡島考喜氏による自身の闘病体験に基づくイラストも交え、対人援助の現場を想定した心得や姿勢についても論じている。
中原理論は、カール・ロジャーズの来談者中心療法を踏まえつつも、相手を「精一杯の姿」と受け止めることをキーワードとする。「空」や「無」になって無条件に相手を受け入れることができない、自身が凡夫であるという現実認識のもと「相手との『同一性』を目指すのではなく、『呼応関係』を目指したカウンセリング」であるとして「凡夫である『私』に可能な実践論が示されている」と、その有用性が評価されている。
定価2420円、浄土宗出版(電話03・3436・3700)刊。