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第22回「涙骨賞」を募集
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包括宗教法人が担う中間支援機能のあり方の考察(2/2ページ)

浄土宗西光寺副住職・龍谷大大学院生 西央成氏

2018年2月16日

私の研究では、教団の支援のあり方について、NPOに対して中間支援をするNPO(以下「支援NPO」)を参考にしました。NPOも独立した法人(団体)であり、寺院は元祖NPOと言われ、支援NPOも教団も民設民営組織であること等から、その支援のあり方について類似性や親和性が高いと考えられます。加えて、私が所属する浄土宗の財団から助成金を受けたことのある宗門寺院に対しても、中間支援の概念をもとに資金以外の支援の需要調査をしました。

支援NPOの支援、寺院の需要と教団の支援を三者比較すると、支援NPOは資源の仲介の双方向性や多様性、マネジメントに関するサポート等が教団より充実し、寺院の需要はコーディネーターやロビースト、教団職員の現場への出向(アウトリーチ)等、人的な支援の充実を中心に求めていることが分かりました。既に部分的に取り組んでいる教団もありますが、教団による中間支援は概ね資源を準備して提供するという物量的なものより、教団のコーディネート力や支援の企画力といった質的な機能が求められているとも言えましょう。

このことから、教団の中間支援を充実させるためにはまず、コーディネーターやプログラムオフィサー(助成機関における助成プログラムの創出、運営、展開等を行う人)といった人材が不可欠です。その上で、マネジメントサポートや組織及び活動内容の妥当性を評価する第三者による評価等、専門的な知識が求められる支援についても制度や人材が要求されます。

また、教団の支援をコーディネートする人材の配置については、教団の事務所より寺院に近い教区等へ配置することも支援の効果を高めるために必要であると考えられます。さらに、寺院の活動は萌芽段階→初動段階→成熟段階を経て自立し、その段階に応じて支援のあり方が変わります。調査対象の教団では萌芽段階への支援は多く用意していますが、同段階をはじめ、各段階に対して適切にコーディネートできていない可能性があります。

研究の結論として、教団の中間支援には専門性が求められていることから、既に多くの実績や経験のある支援NPOと協働することを一案として提言しました。教団の職員に専門性を求めてもよいのですが、基本的にジェネラリストとして採用・育成されるため、理論知が不足します。もっとも、理論知が必要となれば専門家を招聘すればよく、職員は理論知を理解する能力(リテラシー)があれば十分とも言われています。

なお、支援機能の活動領域が伸展すると社会との接点も多くなります。教団の社会的責任は外在的な社会制度上のものではなく、一義的には教団としての布教と教化、それらを担う良き僧侶の育成が求められます。

次に寺院や僧侶が時代に即応した持続的な信仰心の啓発や維持の活動を行う環境の構築、そして、地域社会と寺院をつなぐための活動を支援することです。そのためにも、支援のアウトカム評価や説明責任、情報公開等が求められると考えます。

また、教団の中間支援について「どこまでやるか」という観点から考えると、教団外部では僧侶派遣(仲介)や寺院運営を指南する研修(例えば、「未来の住職塾」)等が活発化しています。

教団の中間支援の活動領域と、このような教団外部の支援との関係性については、寺院が教団に包括されるメリット、あるいは教団の存在意義に直結する問題であると考えます。もちろん、むやみに支援を展開すれば資源不足や形骸化、硬直化を招きますが、今後、ますます教団の中間支援機能のあり方について問われる可能性があります。

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