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包括宗教法人が担う中間支援機能のあり方の考察(1/2ページ)

浄土宗西光寺副住職・龍谷大大学院生 西央成氏

2018年2月16日
にし・おうじょう氏=1978年、三重県生まれ。龍谷大大学院政策学研究科修士課程(地域公共人材総合研究プログラム)在籍。三重県玉城町・西光寺副住職。浄土宗宗務庁職員。一般財団法人社会的認証開発推進機構研究員。

寺院を取り巻く環境は少子高齢化、過疎過密化、あるいはライフスタイルの多様化等による変化を受けて、厳しい論調で語られることが多いものの、近年は改めて地域社会における寺院の存在や役割についての注目や問い直しも行われており、特に研究面では寺院機能としてのソーシャル・キャピタル(社会関係資本)の観点からも関心が寄せられています。

しかし、地域社会における寺院活動は個々の寺院の判断に委ねられているため、知識やスキル、資源が無いという理由で活動を志しても着手できていない寺院が一定数存在していることも、調査により明らかとなっています。個々の寺院の力では取り組みにくい側面に対しては、多くの寺院が包括関係にある包括宗教法人(宗派の事務所。以下「教団」)の支援機能が重要になると考えますが、先述のような寺院を生み出していることから、支援機能が十分に満たされていない可能性を指摘できます。

私は、この支援機能について問題解決の手掛かりを得るため、龍谷大学大学院で政策学の観点から特に伝統仏教教団の機能や組織の研究をしています。

そもそも教団を構成する機能について概観すると「超俗」と「世俗」の二面に分けることができます。社会学者の森岡清美氏によると、超俗は権威への帰依のみあって、世俗は超俗を背負いながら民主化が可能であり、反対に超俗は世俗を介して社会に関わるとしています。

私は世俗について、さらに寺院や僧侶の管理、宗議会等といった「管理機能」と、寺院や僧侶の活動を支援する「支援機能」に分けられると考えています。この支援機能のはたらきは管理機能、特に責任役員会や宗議会等によって意思決定されており、超俗→管理機能→支援機能の順に上意下達する構造とも言えます。

教団が行っている支援は、一般的に「中間支援」と言われるものです。即ち教団が直接何かの事業を展開するのではなく、寺院の何らかの活動を支援し、または教団が支援者(資源等)と活動者の仲介をするという構造です。

ちなみに、日本で中間支援という言葉が用いられるようになったのは2000年代からで、1998年の特定非営利活動促進法の施行後、NPOのサポートを行う組織や団体が、その頃に定着したからとも言われています。近畿大学教授の吉田忠彦氏は中間支援組織の支援について「同種の活動を行う組織間のネットワークづくり、資源提供者と事業組織とのマッチング、非営利活動の啓蒙、非営利組織の環境整備のためのアドボカシー、非営利組織を対象としたコンサルティングや研修」等を挙げており、内閣府も同系の定義をしています。

教団は、中間支援という言葉を用いずとも中間支援を行ってきた歴史があります。例えば、明治以降の社会事業の展開にあたって、教団は寺院の社会事業を支援するための体制構築や事業の展開をしています。戦後、各教団で近代化や教団の体質改善を目指して様々な運動が展開されたことも、その一環と言えましょう。

しかしながら、宗教法人法が施行されて以降、寺院それぞれが独立した法人(団体)となり、宗門への帰属意識が相対的に緩やかになったとも言われています。教団の支援も、寺院との関係性の変化を動態的に捉え直すことが求められています。

昨年、全日本仏教会に加盟する教団の一部に調査をしたところ、中間支援という言葉は認識していませんが、一般的な中間支援の概念に通じる事業を展開していることが分かりました。

例えば、浄土真宗本願寺派の「寺院活動支援部(専任部署の設置)」、真宗大谷派の「教区駐在教導(コーディネーター)」、天台宗の「認定NPO法人AMDAと災害支援活動の協働(仲介)」があり、「事例集」の発行による情報共有や人材養成に関する「研修」「資金支援」は大半の教団で行われていました。

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