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文化財所蔵社寺による鑑賞授業・講座の可能性(1/2ページ)

醍醐寺学芸員 田中直子氏

2020年1月23日 15時05分
たなか・なおこ氏=1972年生まれ。上越教育大大学院修士課程修了、英国セントアンドリューズ大大学院へ文部省派遣留学。専門は美術史、古典技法研究、復元模写制作、美術・伝統文化教育。岐阜県高山市教育委員会文化課を経て、2012年から現職。論文に「醍醐寺蔵『仏涅槃図』の色料に関する研究」(『古文化財之科学』62号)など。
はじめに

境内の参道は、通学路や、遊び、自然観察などに利用されている。大祭には近隣の小学生も参加する。しかし、地域の生徒たちは、塀の内側の伝統的空間や寺宝に触れる機会が少ない。そのような寺社は全国に多いのではないだろうか。

現在、醍醐寺では、学区の京都市立醍醐中学校と連携し、鑑賞授業を行っている。次世代を担う生徒たちに、地域の歴史や伝統文化を自らのものとして感じ、鑑賞がもたらす豊かさを体験して欲しいとの思いからである。これは、「生かされてこそ文化財」をキーワードに、その活用を教育にと望まれる、当山仲田順和座主の考えでもある。本取り組みは2015年に始まり、現在は国立教育政策研究所と京都府の指定校事業になっている。

連携において重視したのは、教師と、僧侶、学芸員間の対話、そして互いの立場・専門性の尊重である。僧侶や学芸員の言葉は時に難解で、生徒に伝わりにくい。教師は場の雰囲気をつくり、専門用語を通訳する達人。生徒とともに有意義な時間を過ごしてほしい。

授業の構成

授業内容は、1年生から3年生までの3年間で、自らの鑑賞の進展を実感できるように構築した。一過性の行事ではなく、学びの持続性を重視している。

醍醐寺での滞在時間は、各クラス、65分。この約1時間を最大限に創造的に過ごせるよう、事前授業に導入としてのインプットを、また鑑賞後には、自らの創造のアウトプット=制作も行う。

鑑賞の対象は、1年生は屏風などの絵画(2次元)を、2年生は仏像「五大明王像」(3次元)、3年生は三宝院庭園と建築の多次元空間としている。

事前授業では鑑賞の手がかりとなる画材や技法を学ぶ。1年生は、天然の顔料(絵具)を学習する。2年生は、仏像の素材である石や木、土、漆、金属などについて、また一木造りと寄せ木造りを学ぶ。3年生は、後にリーフレットを制作するため、事前には各々調べ学習をし、写真も撮影する。

事前授業(1年生を例に)

伝統的な顔料には、藍銅鉱や孔雀石など、天然の岩を砕いたものや、染料などが用いられてきた。また基底材には、絹や、植物の繊維からつくられた紙などが用いられる。顔料は仏像にもしばしば施され、建築にも塗布される。

そこで、1年生は緑青(孔雀石の粉)2種(同じ石でも粒子の大きさにより、明度が違って見えるため)を用いて、和紙に葉を描き、顕微鏡で見る。理科で葉の観察や石の種類、顕微鏡の使い方を習うため、教科を越えた学びが得られる。天然の顔料を、顕微鏡で見ると、その美しさに魅了される。同時に和紙も見ることになるが、日常の洋紙との差は歴然で、繊維の絡まりの深淵さに驚く。本物を体験することで、心の高鳴りやときめきを覚え、「本物を見る力」を培ってほしい。また、天然の顔料は、『正倉院文書』や『小右記』などにも記され、いにしえより貴ばれてきた。それらが希少であることを知り、尊ぶ心を共有したい。

醍醐寺での鑑賞

授業は僧侶の挨拶に始まる。存在自体が伝統文化を象徴する僧侶は、生徒たちにその場の意味を提示してくれる。司会進行は教師、解説は僧侶と学芸員が担う。

鑑賞の流れは、1、学習目標と鑑賞マナーの確認。2、鑑賞。3、解説(対話型)。4、鑑賞。5、解説(質疑応答)。6、まとめと挨拶。ワークシートの記入やスケッチは、2~5の間で随時行う。鑑賞と解説を対で繰り返すことにより、発見に対する理解が深まり、探求心を導くことができる。

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