芸術院会員の書家として知られる
日蓮宗大僧正 星弘道さん(78)
日蓮宗現任6人目の大僧正に叙任された。宗外では日本芸術院会員の書家として知られる。日本を代表するまでに書の研鑽を積めたのは、仏祖給仕の一途な思いがあったからだ。
昨年3月、文部科学大臣から芸術院新会員の発令があり、指揮者の小澤征爾氏らと共に選ばれた。120人以内と定められる会員のうち、書の分野は5人。僧侶の就任は天台宗の豊道春海氏以来2人目だ。
書を始めたのは僧侶になってから。在家の生まれで、縁戚の住職が亡くなり、寺に入ることになった。高校の時の唯一の赤点が書道だったが「仏様、お祖師様に差し上げる書がお粗末では」との思いで習い始めた。ひたすら王羲之などの臨書に努め、1975年の日展初入選以降多くの受賞を重ねた。
上達の秘訣を聞かれると、必ず継続と答える。「いいものを見てまねること。学ぶはまねる。一所懸命まねていると自分の字が生まれてくる」という。特にこだわるのは線の力だ。「心と技は一体で、どのくらい自分を磨いてきたかが全て線に出てくる。書には人となり、生きざまが現れる」
「随処に主なれば立つ処皆真なり」を座右の銘とする。「先生方に導かれ、与えられた場で自分を生かせるようにしてきただけ。僧侶になってなければ、書家にもなっていない」と振り返る。
昨年11月の大僧正叙任式では「ただただ恐れ多い」と恐縮した。「日蓮聖人の書には法華経を伝えようとする思いがほとばしっている。足元にも及ばないが、門下として少しでもご恩返しできるように」とさらなる精進を誓う。
(有吉英治)