悩む人に寄り添いたい
東寺真言宗大本山石山寺 鷲尾龍華座主(35)
紫式部ゆかりの寺である石山寺の第53世・鷲尾龍華座主は4月10日に晋山式を迎える。中学生の頃、前座主・鷲尾遍隆氏を阿闍梨に得度した。この時、僧侶になることを決意したという。
師父の遍隆氏は龍華座主が幼少の頃から日常的に仏教の教えを伝え続けた。「父は食事中に食器を例えに仏教の話を始めたり、部屋いっぱいに仏像を安置していたり、常に仏様の存在について考えていた人。就寝時も小さな仏様を握っていたほどでした」と振り返り「そんな父の姿を見ていた分、小さい時から悩み事があると、自坊の法輪院の観音様を頼りにして祈っていました。今でも自室に祭壇を設け祀っているところは父に似たのかもしれません」と話す。
中学から大学までキリスト教系の学校に通学。「人が生きる上で苦しみを抱えたとき、神様はどのように考えるのか」と疑問を持ち聖書を熟読したという。
大学卒業後、一度は社会に出た方がいいという遍隆氏の考えの下、一般企業に就職。忙しく働く中で心を病む人がいる現実を近くで見ていた龍華座主は、苦しい時に支えになった仏教をより多くの人に伝えていきたいと考え、種智院大へ編入。さらに知識を深めた。
卒業後、2018年に法輪院の住職に就任。東寺真言宗宗議会議員や近畿宗務副支所長、石山観光協会会長を務め、宗内外を問わず活躍している。
龍華座主は「傷つきやすい性格だったからこそ悩んでいる人たちに寄り添いたいと感じる。私が救われた仏教の働き掛けを伝えていきたい」と話した。
(日野早紀子)