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八坂神社と清水寺の史料集相次ぐ(1/2ページ)

奈良大教授 河内将芳氏

2017年10月4日
かわうち・まさよし氏=1963年、大阪市生まれ。京都府立大文学部文学科卒。京都大大学院人間・環境学研究科博士課程修了。京都造形芸術大助教授を経て奈良大文学部教授。近著に『絵画史料が語る祇園祭』(淡交社)、『落日の豊臣政権』(吉川弘文館)などがある。

八坂神社と清水寺といえば、京都のなかでも観光客や参拝者の数では他を圧倒する社寺としてよく知られている。近年はそこへ外国人観光客も加わって、平日といえども、人波が押し寄せない日はないというほどの活況を呈している。いっぽう、八坂神社と清水寺といえば、その創建が平安京以前にまでさかのぼるという点において、京都のなかでも群をぬいた由緒を誇る社寺でもある。

その両社寺で大切に伝えられてきた古文書や古記録の一部が、ここ数年のあいだに相次いで史料集として刊行された。筆者もまた、その刊行のお手伝いをさせていただくご縁をえてきたが、ここでは、そのご恩返しも兼ねて、内容について若干の紹介をしていきたいと思う。

八坂神社文書・記録

そこでまず八坂神社(明治時代以前は祇園社という)のほうだが、同社からは、2014年に『新編 八坂神社文書』(臨川書店)、また16年には、『新編 八坂神社記録』(同上)が相次いで刊行された。

八坂神社に伝えられてきた古文書や古記録については、すでに戦前の段階で八坂神社叢書として『八坂神社記録』上巻・下巻が1923年に、また、同じく八坂神社叢書として『八坂神社文書』上・下が39、40年に刊行されている。

さらに、94年には『増補 八坂神社文書』(臨川書店)、2002年には『新修 八坂神社文書 中世篇』(同上)が刊行され、これらの史料集によって、八坂神社の歴史や京都の歴史、あるいはまた祇園祭の歴史について研究が進展をみてきたことはよく知られていよう。

今回刊行された2冊の史料集には、それらに収められてこなかった古文書や古記録が新たに所収されることになったが、まず『新編 八坂神社文書』では、これまでの史料集に収められてこなかった中世の古文書が活字化された点が特筆される。

これで、現在知りうるかぎりの中世の古文書がおおよそすべて活字化されたことになり、中世における八坂神社の歴史研究にさらに寄与することは疑いないからである。とりわけ応仁・文明の乱によって神輿渡御も山鉾巡行もすべて中止となった祇園祭が、それから33年後の明応9(1500)年に再興されたさいに室町幕府の祇園社家奉行の職にあった飯尾清房に関する文書の存在が複数明らかとなったことで、戦国時代の祇園祭再興についての状況もよりくわしくわかっていくことになるであろう。

また、戦前の『八坂神社文書』上・下以来、そのほとんどが収められてこなかった、近世、江戸時代の古文書が大量に活字化された点も重要といえる。もちろん、これでもなおそのすべてが収められたわけではないが、しかしながら、幕末の慶応4(1868)年までの古文書が多数活字化されたことによって、江戸時代の八坂神社のありかたを考えるうえでは欠かすことのできない手がかりがもたらされたといえよう。

これに対して、これまでの史料集には収められてこなかった中世・近世の古記録が所収されたのが、『新編 八坂神社記録』である。なかでも、室町時代、戦国時代の祇園祭山鉾の名を知るのには欠かすことのできない『祇園会山鉾事』という古記録のより原本に近い良質の史料があらためて活字化された点は重要であろう。

これまでの研究で使われてきた『祇園会山鉾事』というのは、江戸時代中期に八坂神社(祇園社)を管轄していた執行の職にあった行快という僧侶が編纂した『祇園社記』のなかに書き写されたものであった。

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