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長谷・小谷先生への反論(2/2ページ)

浄土真宗本願寺派光教寺住職 入井善樹氏

2018年2月2日

そして、次にわが身の煩悩の邪魔を押さえるために、「自然法爾」とか「無義為義」の「おまかせ」が初めて要求された。これは、『尊号真像銘文』の最後に明確で「このこころをえつれば、他力には義のなきをもつて義とすと、本師聖人(源空)の仰せごとなり」(『聖典』本派673ページ。大派532ページ)という。「このこころをえつれば」とは「橫超の信心」を得たならばという。「義の無きをもって義と為す」といえば、煩悩の「自力」を捨てて「おまかせせよ」という要求であり、これは「恋をすれば、万里の道を厭わない」という、煩悩力を利他行に振り向けようという企画なのだ。

『涅槃経』に「大信心は仏性なり、如来なり」と説かれ、親鸞は何度も引用するから信心の成仏完了は間違いない。『信巻』の最初の文で「大信釈」が説かれる。つまり、「大信心は如来なり」と学ばせるから、『信巻』全体で人間側の信心が、ブッダになって行くことを信じさせようとしているのだろう。すると、信者はアミダ仏と同じ証(さとり)の「如来にひとし」となって、利他行に命懸けになる深信が構築され、その実働が顕現しなければいけなかった。

長谷氏は「現生往生」と「現世往生」を区別された。筆者の考えは「現生往生」は「橫超の信心」の往生といえる。その理由は、「現生十種の益」で「金剛の真心を獲得すれば、横に五趣八難の道を超え、かならず現生に十種の益を獲」(『信巻』、『聖典』本派251ページ。大派241ページ)というからである。「五趣八難」を「橫超」したといえば、信心がこの世を超えて浄土往生したと、信心の事例である。「現世往生」は「現世利益」には含まれないし、浄土に生まれて「正定聚」となるから、当然、正定聚も『現世利益和讃』には説かれない。すると、「現生利益」は信心が浄土往生して、浄土の中の利益すべてを受けたという意味になる。つまり、ブッダにもなった利益ということだから、たとえば「冥衆護持の益」は信心が冥衆となって苦悩者を救うという解釈でなければいけなくなろう。深信者は「諸仏にひとし」というから、念仏する苦悩者を百重千重に囲って、助けてあげるという教示だと受け止めなければいけなかっただろう。これが、大乗仏教の念仏者の利他行の完成といえる。

しかし、「身」が往生・成仏したのではなく、『正信偈』には「煩悩を断ぜずして、涅槃を得る」といい、身の煩悩が真実信心の実働を「雲霧」となって邪魔をする。しかし、涅槃に入った真実信心を日光に譬えると、雲霧の下に闇なきがごとしといい、わずかでも必ず苦悩者にブッダとしての利他行が届けられる。届けられないなら、それは信心がないということになる。ここで、わが身が初めて、本願を毀棄するほどの「悪人」と目覚め深信するのだ。「身」には往生も成仏も起こってはいない悪人だが、信心が成仏して身に呼びかけるから、「汚泥の白蓮」だと讃えられただろう。しかも善導が述べるには、信者はアミダ仏に似てくるという。

「深信するもの、仰ぎ願わくば一切の行者等、一心にただ仏語を信じて身命を顧みず、決定して行によりて、仏の捨てしめたもうをばすなわち捨て、仏の行ぜしめたもうをばすなわち行ず。仏の去らしめたもうところをばすなわち去つ。これを仏教に随順し、仏意に随順すと名づく。これを仏願に随順すと名づく。これを真の仏弟子と名づく」(『聖典』本派218ページ。大派216ページ)というから、還相の信心はアミダ仏同等の利他行を生起し、信者の身に呼びかけるのである。

ところで、伝統教学がいう死後成仏では、親鸞が「諸機の三心は自利各別にして、利他の一心にあらず。如来の異の方便、欣慕浄土の善根なり」(『聖典』本派381ページ。大派331ページ)と嫌われた。「欣慕浄土の善根」とは、いまだ往生しておらず、浄土を願い慕う死後の浄土への善根だと、全く利他行は生まれないと一蹴されたのである。親鸞は「橫超」を「大乗中の大乗」といい、「如来にひとし」の「正定聚」に入ったと、菩薩の最高位だからそれに見合う実践が起こらなければいけないという。長谷・小谷両先生におかれましても「橫超の信心」を学んで頂き、余生一杯に大乗の利他行に邁進して頂きたく一筆啓上いたしました。ご海容の程を……。

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