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宗教と文化の専門新聞 創刊1897年
中外日報社「宗教文化講座」

浄土宗中興の祖 了譽聖冏上人六百年御遠忌を迎えて(2/2ページ)

埼玉工業大特任客員教授 服部淳一氏

2019年8月28日

③浄土宗義伝承の整備
 現在、浄土宗の法を伝える伝法では「教えの流れ」と「戒の流れ」を伝えている。これは浄土宗の教えが大乗仏教の究極の教えであることを表明するものである。

聖冏上人は「教えの流れ」について初期の著述である『浄土真宗付法伝』に記している。そこには本師釈尊・天竺四祖・中国八祖・日域五祖を挙げ、八祖相承(馬鳴・龍樹・世親・菩提流支・曇鸞・道綽・善導・法然)を経巻相承、六祖相承(世親・菩提流支・曇鸞・道綽・善導・法然)を知識相承として、その伝承を明示している。

「戒の流れ」では『顕浄土伝戒論』によって、前半は浄土宗に伝承された円頓戒が正統であることを主張。円頓戒は南岳慧思から天台智顗に伝えられ比叡山に伝承されたが、叡空上人から法然上人に伝授されてから浄土宗の戒法となったことにより、本宗が正当な宗派であると論じる。後半は同じ念仏諸宗において問題になっていた戒と称名念仏に関する記述があり、正行としての念仏に対する円頓戒の影響を論述し、持戒が称名にとって障害にならないことを解明している。

④現在伝承されているもの
 このように浄土宗の基本となるシステムを聖冏上人は構築した。現在、浄土宗僧侶養成はこの「教えの流れ」と「戒の流れ」を伝えることが基本となり、伝法制定から600年余を経過して、形式や修行期間は変わってきたが、脈々と伝えられている。檀信徒への「法を伝える」道場もこの伝法を基本として「五重相伝会」として盛んに行われている。

4、六百年遠忌を迎えて

今から100年前の1919(大正8)年に冏祖報恩会から出版された『聖冏禅師五百年遠忌記念帖』に五百回忌の報恩事業が書かれている。さらには第二世となった瓜連常福寺の書類、『浄土宗大年表』などの記録から二百年遠忌から四百年遠忌の記念行事を見つけることができた。本年の記念行事はこの記録を基として計画された。

①報恩行事
 『聖冏禅師五百年遠忌記念帖』の記述に基づき「聖冏上人六百年御遠忌報恩の会」を設立し、大本山増上寺・八木季生法主を会長に迎え、増上寺役職、開山の寺である伝通院、茨城常福寺をはじめ縁故の寺院が参画し「報恩の会」によって報恩事業を実行する。

【令和元年10月3日】大本山増上寺において六百年遠忌報恩法要。大導師=八木季生大僧正台下。基調講演=服部淳一実行委員長。報恩法話=総本山知恩院布教師会顧問・中村晃和上人、大本山増上寺布教師会長・慶野匡文上人、大本山善導寺布教師会長・早田空善上人

【10月4日】聖冏上人遺跡巡拝の旅=増上寺からバスで巡拝。東京・伝通院、茨城・常福寺、誕生寺、香仙寺

【記念出版】『聖冏上人六百年遠忌記念帖』『聖冏上人物語』

※報恩法要の問い合わせは、報恩の会事務局(伝通院)=電話03(3814)3701=まで。

②展示会
 【神奈川県立金沢文庫】特別展「浄土宗七祖聖冏と関東浄土教――常福寺の名宝を中心に」 聖冏上人が出家し、第二世を継いだ茨城常福寺に伝わる聖冏上人ゆかりの品や、縁のある寺院に伝わる仏像、書画などが展示された。鎌倉から常陸の国に広がった浄土宗は以降、三河を経て京都へとその教線は伸び、教団として一体化していく状況を窺い知ることができた。期間:5月17日~7月15日

【増上寺宝物展示室】「聖冏上人と増上寺開山聖聡上人」展 金沢文庫特別展で展示された品を増上寺でも拝観することができる。期間:8月28日~12月23日

【常福寺】常福寺では例年の聖冏忌である二十六夜尊大祭が10月24日、25日に行われ、聖冏上人にご縁のある品を展示する。

5、今後の展望

聖冏上人については、その教学が江戸時代に幕府の制度によって檀林教育の中心となった。明治になり廃仏毀釈の影響と教学の近代化により聖冏上人の存在は薄くなってきたことは否めない。以降、わずかな研究が続けられてきたが、六百年御遠忌を迎える機運が近年高まり、若手の中に着実な研究をする研究者が増えてきた。『仏教文化』62号に論文が掲載されている。

浄土宗の基本である五重伝法の基礎を作った聖冏上人の研究は教学の面でも、布教の面でも盛んになることが望まれている。

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