水墨の詩…傅益瑶著
著者は水墨画家で、中国・南京市の出身。中国近代画壇の巨匠・傅抱石を父に持つ。本書は、中国と日本の両国にわたる様々な師との出会いとその思い出を振り返るとともに、作品のカラー図版を数多く所収。著者初の作品エッセー集となっている。
父からの「日本には中国の伝統文化がより良い状態で保存されている。中国画の真価は、日本を通すことで、さらに磨き抜かれるに違いない」との言葉を胸に来日し、日本画の塩出英雄、平山郁夫らに師事。日本の祭礼をモチーフとした作品の制作や、比叡山延暦寺、三千院、鶴岡八幡宮、永平寺、善光寺など神社仏閣への襖絵・障壁画の奉納をライフワークとしてきた。
中国での日々、留学生としての第二の人生、水墨画の新たな可能性を求める歩み、の3部構成。どの地にあっても師を探し求め、師に仕える人生を送ってきたと著者は語る。後に天台座主となる半田孝淳との出会い、中国仏教協会会長の趙樸初から教示を受けた「誓願の力」などの逸話もつづられている。また作品制作を通した「悩みにぶつかり、もがき苦しんだ先に、思ってもみなかった気づきを得て、新たな自分自身となる。人は常にこの迷いから悟りへと至る過程を繰り返します」との境地も示されている。
定価2970円、鳳書院(電話03・3264・3168)刊。