病院の閉院・譲渡 宗教系病院の在り方とは(4月19日付)
3月末、宗教系病院で閉院と事業譲渡の動きがあった。閉院したのは本願寺ビハーラ医療福祉会が運営するあそか花屋町クリニック。同クリニックは2021年6月にあそか診療所から名称変更し、新築移転したばかりだった。一方、事業譲渡がなされたのは立正佼成会が経営母体の佼成病院である。佼成病院は学校法人杏林学園に譲渡されて、杏林大医学部付属杉並病院となった。どちらも経営赤字が続いて宗門や教団本体の財政を圧迫し、病院の安定的運営に困難を来したためである。
だが、宗教系病院だけが経営に苦慮しているわけではない。日本病院会など関連3協会が行った医療機関経営状況調査によれば、そもそも全国の7割以上の病院や診療所が医業利益で赤字であるという。そして大半の病院は、補助金がなければ経常利益でも赤字となると指摘されている。
背景には、保険診療制度そのものが持つ構造的問題があり、診療報酬が抑えられている中で、人件費や最新医療機器の導入等で費用負担がかさんでいる状況がある。宗教系病院でも経営努力を行い、また教団からの回付金なども受けているものの、これがまた教団財政を圧迫する原因になっている。
宗教系病院もまた公共医療機関であるが、他の公立や民間の病院にはない宗教的理念を持ち、ビハーラ僧など独自の病院チャプレンを導入したりしている。これがもっと病院の強みになるはずだ。あそか花屋町クリニックでは、ビハーラの活動拠点として期待されていたが、残念ながら実際にはその活動がなかった。
浄土真宗本願寺派では宗会の席上、クリニック閉院に対して総局の責任を厳しく問う声も上がった。宗派としては検証委員会によって、閉院に至るまでの諸々の運営計画や状況等の検証に当たり、ビハーラ活動が衰退しないように努めるという。また、立正佼成会でも、杏林大付属病院との関係は今後も大切にして応援を続けていくとのことだ。佼成病院の理念は真観(正しくみて正しく手当てする)というものだった。この理念は、そのまま一般的にも医療者の診療姿勢そのものに通じるはずである。
病院や学校、福祉施設などの大きな事業は、教団単位でないと展開できないところがある。その事業の原資となるのは信徒が寄託した浄財である。最もコストがかかるのは病院の経営であろう。教団や宗門側では、そうした公益性の高い事業への理解と協力を、信徒に対して今後とも一層強く訴えることが求められる。