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第22回「涙骨賞」を募集
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公的領域における宗教 ― 他界的価値と社会的合法性(1/2ページ)

筑波大名誉教授 津城匡徹(寛文)氏

2024年6月27日 10時19分
つしろ・まさあきら氏=1956年8月、鹿児島県生まれ。東京大農学部林学科卒業。東京大大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。筑波大教授などを経て、現在、同大名誉教授。博士(宗教学、國學院大)。近著に、津城匡徹名で『宗教と合法性――社会的なものから他界的なものまで』(2024)、『無きものとされた近代知――死者とのコミュニケーション』(2022)、津城寛文名で『社会的宗教と他界的宗教のあいだ――見え隠れする死者』(同、以上アマゾン専売)。ほかに著書は多数。
「合法性」という規範

今年5月31日付で、単著『宗教と合法性――社会的なものから他界的なものまで』を刊行した。同書は、宗教がらみの非合法な行為を主対象としたものではないが、高度な規範が求められる宗教(団体、個人)においてすら、不法行為、違法行為、犯罪行為などの残念な事態が、あちこちで起きているのも事実であり、所々で言及せざるをえなかった。

宗教と一括りにされるものも、高/低、賢/愚、正/邪の違いがあり、玉石混交である。最良の組み合わせとしては、高・賢・正の宗教があり、最悪の組み合わせとしては、低・愚・邪の宗教がある。量的には、自然界と同様、大量の「岩石」に、ごく微量の「宝玉」が混ざっている。社会的にも他界的にも高邁な境地を追求する選良がある一方、最底辺においては、一般社会と変わらない蛮行がある。

この自明な観察をふまえて、宗教の「合法性」という問題を考えると、現実的な宗教(団体、個人)においては、非現実的で超越的な建前ではなく、まずは「合法性」という基準を、対社会的な歯止めとして、持ってもらわなければならないと思う。

本稿の文脈

近著の序章に配置したのは、もともと、本紙に12年前に寄稿した短文で、そのタイトル「公共性」と「スピリチュアリティ」は、当時の宗教学会で流行していた二つのキーワードを、そのまま並べたものであった。ふつうは関心や方法が分離しがちなこの二つを、その前年に公刊した拙著『社会的宗教と他界的宗教のあいだ――見え隠れする死者』でつなげていたので、両者の関係を論じるよう求められたものと理解した。

私見では、「公共性」はおもに社会的な次元での価値を、「スピリチュアリティ」はおもに他界的な次元での価値を志向しているが、旧稿をまとめる過程で浮き彫りになったのは、どちらをテーマとする論説でも、定義づけなどの基礎論と並んで、価値論が展開されてきていることであった。つまり、宗教は高い公共性を具えるべき、あるいは高いスピリチュアリティを具えるべき、理想的には両者を具えるべき、という規範である。

そのうえで痛感したのは、高レベルではない宗教に対しては、社会的に「悪いことをしてはならない」という、最低限の「合法性」を求めるだけでよい、ということであった。

社会的・他界的な「合法性」

しかし宗教の「事件」化は、「社会」面を見るだけでは不十分であり、「他界」面への配慮が不可欠でもある。「合法性」という基準は、社会的な場面(公共性)においても、他界(宗教)的な場面(スピリチュアリティ)においても、等しく通用する。他界的な「合法性」とは、瞑想、祈祷、修行などが、スピリチュアルな法(則)に適っているかどうか、といった意味である。もし法(則)を外れれば、当事者は好ましからざる状態に陥るが、社会的な実害に直結するかどうかは、状況しだいである。

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