PR
購読試読
中外日報社ロゴ 中外日報社ロゴ
宗教と文化の専門新聞 創刊1897年
新規購読紹介キャンペーン
PR
第21回涙骨賞募集 墨跡つき仏像カレンダー2025

公的領域における宗教 ― 他界的価値と社会的合法性(1/2ページ)

筑波大名誉教授 津城匡徹(寛文)氏

2024年6月27日 10時19分
つしろ・まさあきら氏=1956年8月、鹿児島県生まれ。東京大農学部林学科卒業。東京大大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。筑波大教授などを経て、現在、同大名誉教授。博士(宗教学、國學院大)。近著に、津城匡徹名で『宗教と合法性――社会的なものから他界的なものまで』(2024)、『無きものとされた近代知――死者とのコミュニケーション』(2022)、津城寛文名で『社会的宗教と他界的宗教のあいだ――見え隠れする死者』(同、以上アマゾン専売)。ほかに著書は多数。
「合法性」という規範

今年5月31日付で、単著『宗教と合法性――社会的なものから他界的なものまで』を刊行した。同書は、宗教がらみの非合法な行為を主対象としたものではないが、高度な規範が求められる宗教(団体、個人)においてすら、不法行為、違法行為、犯罪行為などの残念な事態が、あちこちで起きているのも事実であり、所々で言及せざるをえなかった。

宗教と一括りにされるものも、高/低、賢/愚、正/邪の違いがあり、玉石混交である。最良の組み合わせとしては、高・賢・正の宗教があり、最悪の組み合わせとしては、低・愚・邪の宗教がある。量的には、自然界と同様、大量の「岩石」に、ごく微量の「宝玉」が混ざっている。社会的にも他界的にも高邁な境地を追求する選良がある一方、最底辺においては、一般社会と変わらない蛮行がある。

この自明な観察をふまえて、宗教の「合法性」という問題を考えると、現実的な宗教(団体、個人)においては、非現実的で超越的な建前ではなく、まずは「合法性」という基準を、対社会的な歯止めとして、持ってもらわなければならないと思う。

本稿の文脈

近著の序章に配置したのは、もともと、本紙に12年前に寄稿した短文で、そのタイトル「公共性」と「スピリチュアリティ」は、当時の宗教学会で流行していた二つのキーワードを、そのまま並べたものであった。ふつうは関心や方法が分離しがちなこの二つを、その前年に公刊した拙著『社会的宗教と他界的宗教のあいだ――見え隠れする死者』でつなげていたので、両者の関係を論じるよう求められたものと理解した。

私見では、「公共性」はおもに社会的な次元での価値を、「スピリチュアリティ」はおもに他界的な次元での価値を志向しているが、旧稿をまとめる過程で浮き彫りになったのは、どちらをテーマとする論説でも、定義づけなどの基礎論と並んで、価値論が展開されてきていることであった。つまり、宗教は高い公共性を具えるべき、あるいは高いスピリチュアリティを具えるべき、理想的には両者を具えるべき、という規範である。

そのうえで痛感したのは、高レベルではない宗教に対しては、社会的に「悪いことをしてはならない」という、最低限の「合法性」を求めるだけでよい、ということであった。

社会的・他界的な「合法性」

しかし宗教の「事件」化は、「社会」面を見るだけでは不十分であり、「他界」面への配慮が不可欠でもある。「合法性」という基準は、社会的な場面(公共性)においても、他界(宗教)的な場面(スピリチュアリティ)においても、等しく通用する。他界的な「合法性」とは、瞑想、祈祷、修行などが、スピリチュアルな法(則)に適っているかどうか、といった意味である。もし法(則)を外れれば、当事者は好ましからざる状態に陥るが、社会的な実害に直結するかどうかは、状況しだいである。

《部派仏教研究の現状と展開④》近現代の倶舎学概観 梶哲也氏10月17日

古代インド仏教において、上座部でもっとも有力な学派だったのが説一切有部である。そして、その代表的な文献である世親の『阿毘達磨倶舎論』は、奈良時代に初めて日本に伝来して以降…

《部派仏教研究の現状と展開③》日本における倶舎学 一色大悟氏10月10日

「倶舎学」とは、『阿毘達磨倶舎論(アビダルマ・コーシャ)』と関連文献の研究を通して築かれた、知の総体を指す語である。その核となる『倶舎論』は、紀元後5世紀ごろのガンダーラ…

《部派仏教研究の現状と展開②》実在論と空のはざまで 横山剛氏10月3日

筆者はインド仏教において大きな勢力を誇った説一切有部(以下、有部と略)の教理研究を専門とする。有部の広範で緻密な教理を研究の対象とするのはもちろんであるが、筆者の関心の中…

平和賞受賞の意義 核使用の「タブー」を護る(10月16日付)

社説10月18日

“かかりつけ葬儀社” 人生のステージに支え(10月11日付)

社説10月16日

宗教の価値見直し 地域社会での役割問う(10月9日付)

社説10月11日
このエントリーをはてなブックマークに追加