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「集団的自衛権」巡る動きに危惧 ―「全世界」に対象地域が拡大(2/2ページ)

評論家 孫崎享氏

論2014年5月14日

「まー、問題はあろうが集団的自衛権にはいってもさしたる害はない。日米関係が重要だからいいんじゃないの」という声がある。

これは間違っている。

まず第一に、日本は「国際的安全保障環境の改善のため」に米軍と一緒に行動、つまり軍事行動に参加する。先方がまだ軍事行動を行っていない時を含む。その時には先方は当然報復措置を考える。今だったら中東やアフリカ諸国には日本にテロを行う理由はない。しかし、日本の方から攻撃を仕掛けるなら、これらの国や団体は日本に関するテロを考える。存在しないテロ行為をわざわざ呼び込む行動である。

今一つは対北朝鮮である。

集団的自衛権では「同盟国を攻撃する弾道ミサイルをMDシステムで撃破する」ことが想定されている。北朝鮮のミサイルが米国に行く時、約千キロ上空を飛ぶ。日本に配備される迎撃用ミサイルはせいぜい数十キロ、可能であっても数百キロで届きだにしない。ではどうするか。北朝鮮が撃つ前に攻撃する。

どうなるか。米国は自分にくるミサイルを撃墜するのでプラス。

北朝鮮は撃たれたのでそれに見合う報復をする。北朝鮮は200から300発の日本に到達するミサイル、ノドンを配備しているのでこれが使われる。攻撃され、それに見合う反撃をするので北朝鮮にはプラスマイナスなしとなる。では日本はどうか。ミサイルは米国行きなのでこれを撃墜しても何らプラスにならない。しかし、報復攻撃されるのでマイナスだけが残る。

米国のためといいながら、日本の安全保障にマイナスの行動をとる。それを是とするくらい、日本の指導層は退廃している。

集団的自衛権は米国の軍事目的のために、自衛隊を傭兵的に使うシステムである。しかも自分のお金を使ってである。世界史でもまれな傭兵の形式である。

集団的自衛権を日本が認めた時、日本の周辺諸国からどのような反応が出るであろうか。

まず北朝鮮は激しい反応をするであろう。

集団的自衛権は、日本が「北朝鮮が米国を射程に収め得るミサイル発射を行う場合に」北朝鮮の国土に直接攻撃しようとするものであるから、当然北朝鮮側から激しい反発がある。

中国の場合はどうであろうか。

尖閣諸島の問題など、日本と中国との安全保障関係は基本的に安保条約の範囲で処理される。中国の大陸間弾道弾発射に日本が関与していくことはありえない。しかし、日本政府は「集団的自衛権がなぜ今必要か」という説明を行うのに中国の軍事力強化を口実として使う。さらに、集団的自衛権は日米安保条約の「極東」の域外である南シナ海での日米軍事行動を活発化することに利用される。集団的自衛権の成立には中国の軍部を中心に激しい反発が予想される。

今回、安倍政権が集団的自衛権でどのような内容を織り込んでくるかは、今後の論議を待たなければならない。

しかし、現段階の論議には、正直驚いている。筆者は自分のブログに次のように記載した。

◇

2月22日読売新聞は、「集団的自衛権行使、『抑制的』な5要件…北岡氏」の標題の下に、次を報じた。

政府の「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」座長代理を務める北岡伸一国際大学長は21日、日本記者クラブで記者会見し、集団的自衛権の行使を可能にする憲法解釈の見直しに関し、五つの要件を課すべきだと主張した。

北岡氏は集団的自衛権の行使に際し、〈1〉密接な関係にある国が攻撃を受けた場合〈2〉放置すれば日本の安全に大きな影響が出る場合〈3〉当該国から明確な要請があった場合〈4〉第三国の領空・領海など領域通過には許可を得る〈5〉首相が総合的に判断し国会承認を受ける――の5要件が必要だとした。4月に安倍首相に提出する報告書に盛り込む。

◇

もっともらしく5条件と並べているが、「米国に追随する」以外実質何の中身もない。

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