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「河口慧海旧蔵」と判明 ― 立正大の大崎図書館所蔵資料(2/2ページ)

立正大仏教学部助教 庄司史生氏

2014年5月23日
4.河口慧海旧蔵資料とする根拠

河口旧蔵資料であることを裏付ける根拠として、①資料への本人による署名、②資料への押印(蔵書印)、③資料への書入れ(本人の筆跡によるものや、他者から河口慧海への寄贈の旨を記すもの)、④資料背表紙・表紙への刻印・ラベルの貼付――を挙げることができる。

②の蔵書印として最も多く用いられているのは、彼が創始した「佛教宣揚会」の蔵書印である。

5.写本『ガンダヴューハ』の再発見

請来資料の中で特筆すべきものは、彼が1905年にネパールにてチャンドラ・シャムセル・ラナより寄贈された、ネパール系サンスクリット写本『ガンダヴューハ(華厳経入法界品)』(完本)である。本写本は、河口請来後、高楠順次郎と南條文雄を介して借り受けた泉芳璟、隈部慈明、玉代勢法雲によって解読研究が進められることになる。さらに後には鈴木大拙と泉芳璟によって刊行される同経典校訂テクスト(34年より刊行)に用いられるのであるが、本写本は半世紀以上の間、所在不明となっていた。鈴木大拙による序文には、本写本は東京帝国大に所蔵されていたが、23年の関東大震災で焼失した、とある。詳細は不明だが、東大所蔵のはずでありながら、失われてしまった本写本に対する説明として、このように記したのであろう。実際には、請来者である河口慧海が亡くなるまで手元に置いていたようである。彼が晩年まで『華厳経』に関心をいだいていたことは、壬生台舜が述べるところである。

6.種々の人々との関わりを示す資料

興味深い資料として、河口慧海の『チベット旅行記』にも登場するチベット学者、サーラット・チャンドラ・ダスが河口慧海へ寄贈したチベット語文典『語の解説、三十頌の語義「燈の鏡」』がある。その表紙には「ダージリンのラサ・ヴィラにて、チャンドラ・ダスが日本のエカイ・カワグチに差し上げた、11年5月17日(抜粋)」とチベット文で記されている。

また、スウェーデンの探検家であるスウェン・ヘディンが彼の著書『トランス・ヒマラヤ』2冊を河口慧海に贈ったことは、高山龍三『河口慧海―人と旅と業績』(99年)などに指摘されているが、この2冊も同館にも所蔵されている。ヘディンが贈ったものと推定される。

和装本資料『天台小止観』(1877年刊)からは、インドのブッダガヤ復興運動を行った大菩提会の初代会長ヒッカドゥウェー・スマンガラとの接触がうかがえる。この表紙には、「印度仏陀伽耶ニテスマンガラ僧ヨリ得シモノナリ」とあり、その横には「釋興然」と記されている。この資料は、河口慧海のパーリ語の先生でもあった釋興然がスマンガラに贈り、さらに彼がそれをブッダガヤにて河口慧海に贈ったものと推定される。

以上の他に、同館には河口慧海の弟子らからの寄贈された旨を記す洋装本が多数存する。例えば、河口慧海の弟子である田島隆純や池田澄達らによる寄贈書、他に能海寛の『能海寛遺稿』などもある。

7.洋・和装本の調査が課題

立正大大崎図書館に所蔵されていた河口慧海旧蔵資料は、数としては少数ながらも、その内容は雑多にして種々の形態のものが含まれている。その中には、半世紀以上所在不明であった写本『ガンダヴューハ』や、多くの人々との交流を示す書入れを持つものが多く存する。このように、同館には資料的価値を有するもの、また彼の事績を裏付ける資料となるものが所蔵されている。未発表の洋装本や和装本資料の調査が今後の課題である。

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