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メール相談で大切なこと ― 「届いている声」を待つ(1/2ページ)

大谷大非常勤講師 佐賀枝夏文氏

2014年8月6日
さがえ・なつふみ氏=1948年、富山県生まれ。大谷大大学院文学研究科哲学修了。社会福祉現場で児童指導員、心理判定員を経て、大谷大教授・大谷幼稚園長を2014年3月末で定年退職。著書に『二度目の真宗入門』『君はそのままでいいんじゃないか』など。

わたしは、真宗大谷派宗務所の青少幼年センターでメール相談を担当している愛称「サガエさん」です。メール相談がはじまったのは、宗派の『同朋新聞』に子ども向けの「わかってたまるか! ウチらの言い分」という連載記事に端を発しています。紙面は子どもの「言い分」に対してカウンセラーが応えるという形式です。発行が毎月1回の掲載で、2006年7月から約6年連載されました。この紙面は、若い世代に人気のイラストレーター「100%ORANGE」さんに毎回飾っていただきました。

この企画の意図は、「おとなたち」に届かない「子どもたち」の悲鳴や声、また「子どもたち」に伝わらない「おとなたち」の伝えたいおもいを「つなぐ」ことや「仲介」できたらということが発端でした。とくに学校での「イジメ」「不登校」が社会問題として浮上した時でもあり、時宜を得た企画であったかもしれません。手探りで読者の声を聴きながら連載がはじまりました。

長年、心理カウンセラーとして相談現場を担当してきましたが、メール相談をはじめるにあたって不安や危惧もありました。面談のように声や表情が読み取れないのではないか、ということも気にはなりました。しかし、はじまると杞憂で、心配はすぐに消えました。

◇あるきっかけ

それは、文面のないメールがはじまりでした。文字のない記号だけの、途切れることのない連続メールでした。とまどいもありましたが、文面のないメールを受け取り、文字からは読み取れない「なにか」を感じました。

日ごろ聴いて理解することや、見て理解することを自然なこととして暮らしていますから、「見えない世界」「聴こえない世界」と出会ったようにおもい、求められている手ごたえを実感しました。そのつどメールが「届いていること」、メールを「待っていること」を送りつづけました。時間は経ちましたが、「語る」メールが届きはじめ、メール交換がはじまりました。顛末は詳細にはご報告できませんが、「感謝メール」が届いて終結しました。求められれば、応える「感応道交」の世界を体験しました。

◇勘違い

わたしは、心理カウンセラーとして「学生相談」「子育て相談」「職場のメンタルヘルス」などの現場をいただき、相談業務をしてきました。いつも大切にしてきたのは、積極的に傾聴するアクティブ・リスニングとして聴き取ることでした。また、そのための質問技法を用いた「聴く」方法を習得してきました。「聴いて理解する」がカウンセラーの本務と考えていました。心理査定も情報がなければ判断ができないと考えていました。そして、相談支援は、時間をかけ過ぎれば問題化することもあると考え、短期間で支援するカウンセリング方法の習得に関心を持った時期もありました。このように慌ただしく、忙しく相談業務をしてきました。

それに追い打ちをかけたのが、若者の「コミュニケーション力の低下」という話題でした。たしかに、対人関係において「伝える」「受け取る」は基本といえます。いつの間にか、「ことば」からの情報にウエートをおくようになっていました。現代社会は、かつての伝統的な「ムラ共同体」ではなくなり、匿名性の高い社会になりましたから、「自己主張」が重要視されるのもわかるようにおもいます。

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