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日本仏教の文明史的役割 ― 人間的欲望を否定せず(2/2ページ)

広島大大学院総合科学研究科教授 町田宗鳳氏

2014年10月31日

文明には一定の周期があるため、近未来、ヨーロッパ文明からアジア文明へのパラダイムシフトが起きる可能性は高い。従来の文明史上では、転換期には必ず「文明の衝突」が発生し、そこに大規模な武力行使が展開された。その例として、十字軍の中東遠征やモンゴル軍のヨーロッパ侵攻などが挙げられる。

恐ろしいことだが、来るべき文明の転換期においても、それまでの超大国アメリカと、次世代の超大国にのし上がろうとしている中国の間に、大規模戦争が勃発する危険性は決して小さくはない。毎年、膨大な国家予算を注いで増強されている中国の軍事力が、アメリカのそれに匹敵するものとなった瞬間、衝突の危険性は一気に高まることになるだろう。

そういう時に抜群の発酵力を持つ日本仏教が、何らかの形で文明間の緩衝材としての役割を果たし得るのなら、これは人類史上、特筆すべき貢献となる。ただし、日本仏教が単なるイデオロギーとして世界進出していくとは思えない。なぜなら宗教思想が世界性を帯びるためには、つねに文化という乗り物が必要となるからだ。

キリスト教思想もまた、産業革命によって格段の発展を遂げたヨーロッパ列強が世界進出するに伴って地球規模に広がったのである。異国の地で聖書の福音を説いたのは宣教師かもしれないが、彼らの影響によって洗礼を受けた人間よりも、ヨーロッパが生み出した政治経済システムや芸術文化を通じて、はるかに多くの人間がキリスト教的な思考を身につけるようになったのである。それは植物の種子が、その果実を食べた動物によって遠方まで運ばれる仕組みと似ている。

したがって極東の小さな島で育まれた日本仏教が世界性を帯びるためには、一般市民がより深くその思想を理解し、それを政治経済システムや芸術文化の中に取り込み、現実社会の中で積極的に表現していく必要がある。今までのように思想を置き去りにした経済力や科学技術力だけでは、これからの時代において日本の国際貢献は望み得ない。

そういう時代だからこそ、仏教僧の新しい役割が期待されるのだ。それはみずからが学び、体験した仏教思想をより分かりやすく編集し直し、それを一般市民に的確に伝えていくことだ。奇しくも、そういう働きを僧侶がせざるを得ない社会背景が生まれつつあるのは歴史の必然かもしれない。なぜなら月例法事や葬儀を寺院に依頼したり、墓地を購入したりする人が急速に減りつつあるからだ。もはや伝統的檀家制度が機能しなくなりつつあるわけだから、各寺院はよほどの工夫を凝らさないと運営困難になることは、火を見るよりも明らかである。これは寺院側にとって大きな試練ではあるが、考えようによっては既存の制度の上にあぐらをかくことなく、各宗寺院が新たな社会的使命を果たす存在へと変貌を遂げる絶好のチャンスでもある。その変貌を怠った寺院は、これから短期間のうちに自然淘汰されていくことになるだろう。

僧侶個人も、ようやく頑迷な寺院組織から解放され、みずからが信じるところの思想を大胆に表現する自由を与えられているのだから、もはや自宗の優越性を説く教学にうつつを抜かしている場合ではない。一般市民が期待しているのは大きな歴史のうねりの中で、自分たちが進むべき方向性を示してくれる啓蒙的思想家にほかならない。日本仏教が文明史的使命を果たし得るかどうかは、ひとえに宗教家の自覚にかかっている。

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