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富士講の文字をパソコンでつくる ― 独特な「角行系」(2/2ページ)

富士信仰研究者 大谷正幸氏

2016年2月5日

歴代の行者による角行系文字の用例を探すのは難しいことではない。具体的には彼らが書いた古文書やお身抜と呼ばれる掛け軸から文字の用例を取り入れていけばよいのである。そうして筆者は角行をはじめとして近代の丸山教に至るまで多くの例を収集し、それらを文字の種類や用途に合わせて16の群に分類した。また、角行系文字だけではなく、富士信仰の古文書に現れる抄物書き「ササ菩薩」、合字「トモ」「シテ」も組み込むことにした。

さらに角行系文字だけではなく、富士講で彼らが使う紋、即ち講紋をデザインして収録した。セクト意識が強かった富士講では、自派に紋章をつけて他の富士講と区別した。これを講紋という。講紋はセクトとしての呼び名にも密接に関わっている。例えば、道玄坂(東京都渋谷区)を拠点とする山吉講という古参の富士講があった。彼らのヤマキチという名は、家紋でいう山形の下にデザインされた「吉」字(先達を代々務めた吉田家に由来する)を置く講紋そのものである。富士講による石碑や富士山御師が付けている宿帳などでは、彼らを端的に表す記号として講紋がしばしば描かれる。これも文字と同じように扱いたい。

百味供養碑ヒント

講紋を収録するアイデアは、真言宗智山派安養寺(東京都大田区)にある百味供養碑という石碑から得た。この明治中頃に建てられた碑には、本堂の薬師如来に百種の食べ物を以て供養したいという趣旨になぞらえて、都合100個の講紋が列挙されている。しかし、いざ作りだしてみると欲が出てくるもので、百味供養碑に無い講紋も欲しくなってきた。そこで、都内各地の寺社境内にある富士講の石碑から、取り入れたいものを集めることにした。フォントの文字はIPAフォントという、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が配布しているものを基にしている。簡単なライセンスを順守すれば、このフォントを基に改変したフォントを無料で作ることができる。しかし、寺社境内にあるものをデザインのモチーフとして用いるには、管理している宗教法人への許諾が必要となる。かくして各法人に対して事情を説明して許諾を得ることとした。

慣れない交渉事でフォントの説明もおぼつかなかったが、非営利・学術利用目的であることにご理解をいただき、最終的に安養寺、品川神社(品川区)、浄土宗専修院(豊島区)、鳩森八幡神社(渋谷区)など10の宗教法人から許諾を頂戴した。拒絶した宗教法人もあったことは残念である。千社札からも講紋を取り入れることとし、千社札のコレクションを多数持つ国立国会図書館からも収録の許諾を得られた。ご協力くださった各宗教法人や国立国会図書館には大いに感謝を捧げたい。

角行系文字フォントは、現在のところ、拙ウェブサイト「富士信仰アーカイブズ」の専用ページ(http://fjska.sakura.ne.jp/kkgkf.html)にて無償で提供される。利用や印刷は自由にできるが、これを基に改変したフォントを作る場合はIPAのライセンスに制約される。筆者の望みはこのフォントを使うことで富士信仰の史料や石造物が研究資料として扱いやすくなること、その一点である。研究資料が豊富になることで、従来行われてきた根拠のない研究も減るであろう。しかしながら、未収録の角行系文字がまだ存在し、また未収録の講紋も数多くある。これからもこのフォントを充実させ、富士信仰研究に資したいと思う。

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