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第22回「涙骨賞」を募集
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第22回「涙骨賞」を募集

9・11から20年(1/2ページ)

黒住教教主 黒住宗道氏

2021年9月30日 09時22分
くろずみ・むねみち氏=1962年、岡山市生まれ。成蹊大文学部卒業後、英国国立ロンドン大SOAS留学。世界連邦日本宗教委員会副会長、世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会理事。著書に『ロンドンだより』『生かされて生きる使われて踊る』『黒住神道―いのちの親の七光り―』など。

2001年10月3日、黒住教武道館(岡山市)を会場に、RNN(人道援助宗教NGOネットワーク)主催の緊急シンポジウム「イスラム―その平和の教え―」が、宗教法人日本ムスリム協会の樋口美作会長(当時)を講師に迎えて開催されました。RNNは「祈りに基づく行動と、行動を伴う祈り」を共通理念に、主に岡山県内の諸宗教者が心ひとつに人道援助活動を行う連合体で、毎月1回の定例会で意見を交わしながら25年の歩みを重ねています。9・11直後の定例会で衆議一決したのが、「いま我々が発信すべきは、イスラームの正しい理解」でした。世話役の事務局長である私が直ちに樋口氏に電話で依頼して、結果的に、米国によるアフガニスタン・タリバン政権への武力行使の前に行われた唯一の“諸宗教によるイスラーム公開講座”として実現の運びとなりました。

サミュエル・P・ハンチントン著の『文明の衝突』の影響もあって、人々のイスラームに対する誤解と不安が渦巻く中、樋口氏は「ジハード」の正しい解釈とともに原理主義と原理主義過激派の違いを明らかにして、「アッラーは法(のり)を越える者を御愛でにならない」との教えを紹介した上で「自爆テロなどに走る過激派はイスラームではないとの共通認識をもっている」と強調されました。また、「排他的な印象が拭えない……」とか「対話の姿勢があるのか?」といった質問に対して、「コーランには『我々には我々の宗教がある。あなたにはあなたの宗教がある。宗教は強制してはならない』と明記されており、他の宗教も認めています。一方、これは認め、あれは駄目というのもはっきりしていて、協調性、融通性には欠けるという印象も与えるかもしれないが、それは生活そのものが信仰であり、イスラームに誇りを持っているから」と丁寧に応じられ、氏の誠実な人柄によってイスラームに対する印象は確かに和らげられました。

講演の後、RNNメンバーの金光教、天台宗、カトリックの各宗教者が、私の司会で樋口氏と意見交換を行うパネルディスカッションを行いました。閉会に際して、氏は「『イスラーム信仰の安らぎや温もりを、そのまま話して欲しい』と頼まれ、諸宗教で温かく迎え入れてもらったことに心から感謝したい」と、わざわざ御礼を述べて下さいました。この日から、RNNの新たな仲間にイスラームが加わったことは申し上げるまでもありません。

翌月に平和の祈り

ところで、前年の西暦2000年8月に、ニューヨークの国連本部に世界90余カ国から千人以上の宗教指導者が集った「ミレニアム世界平和サミット」が開催され、神宮大宮司と天台座主を大代表にいただく「日本使節団」の幹事長に私が任命されました。この大役を全うするために「万が一の場合の“駆け込み寺”」として頼みの綱にしたのが、当時世界貿易センタービル北棟90階にオフィスのあった中国銀行(本社・岡山市)ニューヨーク支店でした。世界の宗教者が国連本部で新たな千年の平和をともに祈り、「赦しと寛容」をキーワードとして真剣に語り合った奇跡的なサミットから1年後に、頼りにしていた天空のオフィスが、あの巨大なツインタワーが、まさか壊滅してしまうとは……。受け入れがたい衝撃でした。

9月12日朝、私は「日本使節団」結成の人選をお願いした「WCRP(世界宗教者平和会議)」と「世界連邦日本宗教委員会」の事務局に電話して、「できるだけ早く再びニューヨークに世界の宗教者が集って、イスラームの人たちとともに平和を祈り、その姿を世界に発信しなければならない!」と懇望しました。同じ思いの人が他にもいらっしゃったからでしょうが、10月23日から2日間、WCRP主催による「世界の諸宗教指導者による国際シンポジウム」並びに「テロ犠牲者追悼と平和への祈りの集い」がニューヨークで開かれ、私も出席させていただきました。9・11の翌月に世界の諸宗教指導者が、「イスラーム圏とキリスト教圏の争いにしてはならない」というメッセージをニューヨークから発信し、当地最大のイスラーム施設であるイスラミックセンターでの平和の祈りとグラウンド・ゼロ最寄りのセントピーターズカトリック教会での追悼式を伝えるニュースが、世界中に配信された意味は大きかったと思います。

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