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中外日報社「宗教文化講座」

《新年座談会⑥》コロナ後、社会・宗教どう変わる?― 読み替えで日本仏教豊かに(1/2ページ)

 安藤礼二氏

 中島岳志氏

 釈徹宗氏

2022年1月14日 09時00分

安藤 釈先生は『教行信証』についてどのようにお考えですか。

 自分の主著に法然を引用しないのは明らかに不自然なので、親鸞には意図的なものがあったのでしょう。それは正式なタイトル『顕浄土真実教行証文類』にも表れていると思います。「教行証」は仏教の骨格です。法然は「三学非器」と言いまして自分は教行証を納める器ではないと言う。ちょうど親鸞が『教行信証』を書いている時は法然批判の火の手が上がっている時でした。「いや法然上人のおっしゃったことは間違いなくきちんと仏教の構造にのっとっているんだ」というために「教行証」というタイトルを付けたのでしょう。通称「教行信証」ですが、これは後年の略称で、親鸞の時代や親鸞の直接の弟子たちは「教行証」と略称しています。

しかし、構成自体は「教・行・信・証」となっています。これは行と信を不離として捉えたからで、「教・行=信・証」ということです。この書が引用だらけなのは、親鸞が比叡山で文献学をやっていたためだと考えられます。つまり法然思想の論証だと言えるわけです。ただ、中島さんの「死者の器」「共に書いた」というお話は『教行信証』を宗教情念的に読む上で良い補助線になるような気がして、興味深く伺いました。

安藤 基本的に「死者と共に書く」ことで未来を切り開いていくことが日本の仏教を豊かにしてきたと思います。それぞれの読みを許容し、それが師匠から弟子に連なり、それをある種、独創的に読み替えることも可能だといえる。法然と親鸞の関係はまさにそのような関係として考えられないでしょうか。それまでの正統的な物を読み込みながら新しいものに作り替えていく。そのことで仏教に力強い生命力が宿り直す。その繰り返しではないかと思います。

 死者の目を意識しながら生きることは人類の知性や感情の基盤にあって、死者の目を意識することが人類の心を鍛錬してきた面があると思います。それは中島さんの先生のお話もそうですが「死者からの贈与を受け取る」という感覚でしょう。民俗学では贈与の問題はいかがでしょうか。

安藤 柳田も折口もモースの『贈与論』に大きな関心を持っていました。柳田は当時『民族』という雑誌を創刊しています。日本でも『贈与論』が出た近辺から本当の意味で民俗学が始まっているのですね。芸術の分野を見ても世界的な新しい潮流がこの時点で生まれています。

 今インターネットが発達しクラウドファンディングで「こんなことで困っています」と書いたら皆がお金を送ってくれたりする。新しい回路を使った贈与はグローバリズムの問題とも関わってくるように思います。

昔「ブッシュマン」という映画がありました。今は「コイサンマン」という名前に変わったと思いますが、セスナ機に乗っていた現代人がコカコーラの瓶を外に放ったらコイサンマンたちの近くに落ち、そのコカコーラの瓶を使ってイモをすりつぶしたり皮なめししたりして、すごく便利で皆で取り合いになってしまう。それまでコイサンマンは全く争いのない部族だったのにその瓶の取り合いで暴力事件まで起きた。コイサンマンは「神様に返してくるよ。これのおかげで争うようになったじゃないか」と返しに行く話です。

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