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宗教と文化の専門新聞 創刊1897年
中外日報社「宗教文化講座」

《新年座談会⑥》コロナ後、社会・宗教どう変わる?― 読み替えで日本仏教豊かに(2/2ページ)

 安藤礼二氏

 中島岳志氏

 釈徹宗氏

2022年1月14日 09時00分

あれがどうして贈与にならないかというと、コカコーラの瓶は分配できないからですね。そういう意味では受け取る側があって初めて利他行為が発生するというお話がありましたが、よく分からないものがやってきたとき、いかに分かち合うかというのが、きっと人間の態度として大事なのだろうと思います。

安藤 モースが『贈与論』の前に書いた雑誌論文「呪術論」の中で、呪術の核を表現するメラネシアの人たちの言葉「マナ」を重視しています。マナは動詞、形容詞、副詞でもあり、何か意味が生まれてくる根源としても同じこの言葉が使われている。それが宿ると何か非常に強い力を持つ、しかしそれはマナとしか名付けられない。言葉とはマナなのです。言葉の意味は物と違って共有することができますよね。言葉は力であり共有されて、良い方向にも悪い方向にもいくことができる。現状を認識し、理想を示して現状を変えられるかもしれない。そういう意味で、言葉が贈与の源泉そのものだと言えます。

これからの宗教者と文学者は重なり合う部分が多いと思います。死者と共に生きながら、死者と自分たちが共有することをどう未来につないでいくのか。言葉は社会そのものを変えてしまう強烈な力を秘めている。法然、親鸞が現れて浄土の教えが全く変わり、後に一向宗の運動なども組織されました。

言葉は贈与、さらには内在と超越の問題とも重なり合うと思います。これからの宗教者は贈与としての言葉を使えるような表現者になっていくべきではないか。表現はきれいなことを言うのではない。贈与としての言葉を発し、その言葉を分け合って、共に生き、共に世界を変えることができる。それがポストコロナの宗教者の役割ではないか。言葉の力を再確認することは、コミュニケーションの立て直しにもつながると考えています。

 道元が「愛語よく廻天の力あることを学すべきなり」と『正法眼蔵』に書いています。愛語は仏教の基本的な実践の一つで、慈しみの言葉はこの世の中を変えるだけの力があることをよく考えなければならないという意味です。その言葉を思い出しました。

中島 安藤さんのおっしゃる通り、かつて言葉は宗教そのものだったと思います。インドで勉強したヒンディー語に「与格」という文法があります。主語を「私は」で始めるのか、「私に」で始めるのか二通りあるのですね。「私はうれしい」の感情表現は「私にうれしさがとどまっている」という言い方です。コロナにかかったことも与格を使い、「私にコロナがやって来た」。私の行為が私の意志ではなく不可抗力、私の外部によってもたらされるときに与格を使うと習いました。

ではどこから来るのか。やはりインド人が発想する与格の源泉は神だと思います。神からやって来るものの器になっているという感覚が言語そのものに表れている。よくよく考えると私たちは主語で生き過ぎている。主格に全部置き換えてきたのです。國分功一郎さん(1974~)が『中動態の世界』で言う中動態とは与格のことですね。もともと世界の言語構造は中動態とか与格が中心だったはずです。日本語でも「私には思える」「思いが宿る、駆け巡る」と言うように、思いを主格で考えていないのですね。

「これ思おう」とは思わずに、ぱっと見た風景から連なって思いがやって来るのが通常です。やって来るものがとても重要で、インドでは言葉もやって来る。親鸞もそんな感覚があったはずで、『教行信証』もそういう本だと思うのです。言葉は私に宿ってまた次の世代へとバトンタッチしていく。主格を乗り越えて本来の与格的なもの、やって来るものの器という感覚をどういうふうに持てるのかがとても重要だと思います。

 安藤さん、中島さん、長時間ありがとうございました。(おわり)

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